第11話 ただ生きるためだった

文字数 468文字

猪も狩れるようになった八作にとって山は非常に生きやすい場所となった。
食事には困らず、日々を過ごしていた。
だが、その食事を支える道具はそうもいかない
刀は脂と血と骨と様々な要因で使えなくなる。
そして今日最後の鈍刀がダメになった。
残るは熊と相対するためにとっておいた刀だけとなった。
もう大きい動物は狩れない。
覚悟を決める時が来た。
洞穴の外では雪も降り始めていた。
それは両親が襲われた時期であった。


次の日の朝、八作は親が襲われたという場所に来た。
この近くに巣があるかもしれない。
軽く周辺を見渡すと寝床より大きい洞穴が見つかった。
中をちらと見ると団栗が転がっていた
おそらくここが巣なのであろう。

八作は持ってきた山菜や団栗、肉を巣の周りに置いた。
そしてそれを見渡せる場所でぼうと眺めていた。

日が陰り始めたころ、熊が見えた。
団栗を巣に持ち帰る様子であった。

巣の周りに置いた食材に熊は気づく。
やはり警戒しているのか、近づいたり離れたりしていた。

八作はゆらりと立ち上がり、熊へ近づく。
熊は八作に気づき立ち上がった。


立ち上がった熊の眉間に刀が刺さっていた。
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登場人物紹介

八作:武家屋敷に努める小姓。正式な武士ではないものの周りでは有名な強者として知られている

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