第9話 野生と知性

文字数 612文字

18日目。
朝、3本目の刀で素振りを始める。
今回は刀を落とさなかった。
確実に力を取り戻しつつある実感がわいてきた。

そのまま水を汲み、山菜を摘む。その時は狩りのことは考えないでいた。

そして洞穴に帰った八作は考えた策を実行することとした。
なんてことはない、八作は罠を張ることとした。
作ってみたのはくくり罠であった。
持ってきた縄と、周りの草や蔓、枝を用いて作った。
罠の中央には山菜を置き、じっくりと待つ。
それもなるべく心を落ち着けた状態で。

日はちょうど真上に上がってきた頃であった。

肉を楽しみにするという気持ちがあるが、自分には燻製の残りがあるという余裕を持ち待つこととした。
そうして待ち続け日もくれそうになったころ、そろそろ引き上げとうとした際にウサギが罠に入った。
「(来た!)」
八作は紐を一気に引き、罠の輪の部分を絞める。
ウサギは見事に捕まった。
「(こうもうまくいくものであったか)」
罠を仕掛けることを考え実行した初日にして捕まえるとは上々の出来であろう。
八作はウサギを掴み、洞穴へと戻っていった。

その日もウサギ鍋を食べ精力をつける。


八作は肉を食べ始めたこともあり、修行にも身に入るようになっていった。
動物を捕まえられない日もある。だが今までのように血気盛んに探すこともなく落ち着いて日々を過ごすことができた。
時には近づいてきた動物を刀で切り獲物とすることがあった。
それほどまでに死の淵から戻ってきた八作は精神的に成長していた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

八作:武家屋敷に努める小姓。正式な武士ではないものの周りでは有名な強者として知られている

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み