宇宙旅行

文字数 677文字

 私の名はレイモンド。
年はまあ、おじ様とだけ言っておこう。
私は今、ワープ7所謂、次元選択ワープをする旅客船に乗っている。
殆どの人が安全快適なゲートを使った、豪華客船で宇宙旅行をする。
そうだ、その方が楽しいに決まっている。
だが私は、あんな雑然としたパーティーの様な船旅は嫌いだ。銀河を旅するならワープ船に限る。この船は中型船なので、客席は50程しかない。隣との距離が離れていて、人と肘をぶつけ合うなんて事はない。

 尤も豪華客船の様に、レクリエーション設備は無いので。精々立ち上がって、窓から外を見るのが娯楽の1つである。
それでも暗い外の景色は、時には古の夜行列車の様な風情があり、客の殆どが寝て過ごすか酒を飲むか、本を読むかテレビを観て過ごすのだ。これが旅と言うものではなかろうか。
 私は賑やかなのが苦手なのだ。

 仕事柄、人との馬鹿げた雑談とパーティー騒ぎは、しょっちゅうなのだ。
仕事ではない移動は、私にとっての唯一の寛ぎの時間と言っても良かった。
 だが最近、この手のワープ船は豪華客船よりも高額に成っている。プライバシーと緩やかな寛ぎの時間を与えるワープ船は今、金持ちの間では密かな流行となっていた。

 何より私にはワープ中、真っ暗な窓の外を見るのが楽しみなのであった。
漆黒の闇、何も見えない窓に映リ込む、客席の人の動きが手に取る様に見える程だ。
 だが・・・。始まった。まただ、あのアホ。
コリもせずにまた始めたな・・・。
 私は手に持ったワイングラスに口を当てた。
窓の外は真っ白な空間になっていた。
そう真っ白なのだ。
そして、色んな色が流れる景色へと変わった。
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