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文字数 721文字

 彼、ボンベイは答えた。

「いえ、レイモンド。ですが、あなたなら、
どうにでも抜けられるかな?と思いまして。
それに、ロープを見て直ぐに気が付きました」

 確かに、あれはいただけない。強盗があんな高価な紐を使う訳がないのだから。
 私達はピザを堪能して店を出た。
土産に3つ程焼いてもらって、テイクアウトをした。
ロベルトが冷めたら不味いぞと言ったので。
大丈夫、ボンベイが異次元で保管するから、と返事をした。
そうなのだ異次元では、我々の時間感覚は無意味なのだ。
銀河に戻っても焼き立てが食べられるのだ。
これ程、便利な保存庫はない。

「また、会えると良いな」

ロベルトは私と握手をして、そう言った。
 これ程の腕を持つ、職人気質のロベルトが、何故こんな辺境の無法地帯に居るかと言うと。
彼は浮気をした妻の浮気相手を殺してしまったのだ。そんな事なら、私が優秀な弁護士を雇って、何とでも出来たのだが。
残念な事に、その浮気相手が政府の高官の弟だったのだ。
つまり、兄である政府の高官が失脚でもしなければ、彼は銀河に戻って来れないのだ。

 私は心に決めていた。
銀河に帰ったら、最初に手掛ける仕事は、かの政府の高官とやらを、抹殺する計画を発動しようと。さて、どうやってあの糞男を引きずり下ろすかな。私はありとあらゆる情報網を使って、この計画を成功させようと考えていた。

 私が帰りに乗った船は、行きよりも人の数が少なかった。
ああ、これで帰りはゆっくり出来るな、と思っていたら。窓の外を見て皆が騒いでいた。
私は一瞥をくれて、手に持った本を膝に叩き付けた。

 バーグ!帰りは止めろと言っただろう!
あいつは、人の話を聞かない。

 終わり。


 平成28年9月24日初稿
 令和5年11月1日加筆修正。
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