第1話 旅に出る1.2

文字数 1,010文字

「まだこんなに(あか)るいうちから出歩(である)いて、お(かあ)さんにおこられやしないの、リリス」
 ミルクが、リリスにかけよりたずねました。
「お(かあ)さんはいつだっておこっているよ。おこるのが仕事(しごと)みたいな()(もの)だからね」
 リリスは(はな)にしわをよせて、いたずらっぽく(わら)い、(はなし)(つづ)けました。

「この(まえ)も、正午(しょうご)太陽(たいよう)観察(かんさつ)しようと(おも)ってね。
わたし、こっそり(ひる)まで()きて、屋根(やね)うら部屋(べや)にかくれていたんだ。
でも、結局(けっきょく)(かあ)さんに()つかって、ひどくしかられたさ。
魔女(まじょ)昼間(ひるま)はねて、(よる)活動(かつどう)するものだって。
(ちい)さいうちから昼間(ひるま)()きていたいなんて、お(かあ)さんはわたしをひどく()わったむすめだって()うんだ」

 リリスは、()って()たほうきを(おもて)のドアのわきに、なれた()つきで()てかけました。
そして、そのままいきおいよくドアを、バタンとしめました。
けたたましくドアをしめるのは、魔女(まじょ)にとってはれいぎ(ただ)しいやり(かた)なのです。
「それにお(かあ)さんは、わたしがあんた達犬族(たちいぬぞく)となかよくするのも、ちっともよく(おも)っていないんだ。
魔女(まじょ)はネコと、人間(にんげん)(いぬ)となかよくするものなんだって。
どうしてって()いたら、もう大昔(おおむかし)からそういう(ふう)()まっているんだなんて()うんだけど。
でも、あいつらネコって気取(きど)ってて、わたしは()きじゃないな」

「コーヒーとサンドウィッチはいかが」
 イヴが、かた()にコーヒーポットを、もうかた(ほう)にはサンドウィッチがたくさん()った大皿(おおざら)()って、リリスのもとへやって()ました。
ポットは(あたた)かくて、そこからコーヒーのいいかおりがただよってきます。
はだ(ざむ)夕方(ゆうがた)に、友達(ともだち)(たの)しく(はなし)をするには、(なに)(すこ)しつまめる(もの)と、コーヒーが一番(いちばん)いいのです。
「いいね。ぎゅうにゅうたっぷりでお(ねが)い。それからたまごのサンドウィッチがあったらちょうだい。
ああ、まだ(あか)るいうちに(なに)()べるなんて、わくわくする」
 リリスはにこにこしながら、みんなの(かこ)んでいる、茶色(ちゃいろ)()のテーブルにつき、イスの(した)(あし)をバタバタさせて(よろこ)びました。

「ところで、(なん)だってまたこんな時間(じかん)に、あわててやって()たんだね」

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次回の掲載は2024年4月18日です。
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