第１話　旅に出でる　１．４

「雨上(あめあ)がりなんかに、にじを見(み)たことがあるだろう。
ところでみんなはにじがどこから来(く)るか考(かんが)えたことがあるかい？　
空(そら)にかかったにじは全(すべ)て、にじしょく人(にん)が私達(わたしたち)の世界(せかい)に持(も)って来(き)た物(もの)なのだよ」

　三人(さんにん)は身(み)を乗(の)り出(だ)してダイの話(はなし)に聞(き)き入(い)りました。

「一年(いちねん)の内(うち)に、どこにどんなにじが出(で)るか、天(てん)の運命(うんめい)で決(き)められていてね。
その運命(うんめい)に合(あ)わせて、天(てん)に住(す)むしょく人(にん)が、大(おお)きいのや小(ちい)さいの、それこそいろいろな形(かたち)をしたにじを、雲(くも)の上(うえ)で毎日作(まいにちつく)っているんだよ」

「毎日(まいにち)って、今(いま)もこの空(そら)のどこかでしょく人(にん)さんが働(はたら)いているの？」
　黒(くろ)い目(め)をきらきらさせてしつ問(もん)したミルクに、ダイがうなずき答(こた)えました。

「にじしょく人(にん)は、天(てん)のしょく人(にん)が作(つく)ったにじを、地上(ちじょう)の私達(わたしたち)の所(ところ)へ運(はこ)ぶ仕事(しごと)をしている人達(ひとたち)のことでね。
わたしもくわしくは知(し)らないのだが。
昔聞(むかしき)いた話(はなし)だと、たしかかれらはにじの光(ひかり)がもれないように、自分(じぶん)のかげで作(つく)った、真黒(まっくろ)なかばんを持(も)っていてね。
そこいっぱいににじをつめて、世界中(せかいじゅう)を飛(と)び回(まわ)る。
そして天(てん)が作(つく)った一年間(いちねんかん)の予定表(よていひょう)にそって、毎日(まいにち)、世界(せかい)のどこかの空(そら)を、にじでかざっているそうなんだ」

　イヴ、ミルク、ポチは、ただもうおどろいて、目(め)を丸(まる)くしました。
とてもおもしろくて、少(すこ)し不思議(ふしぎ)な話(はなし)です。

ダイが話(はな)し終(お)えると、今度(こんど)はイヴが口(くち)を開(ひら)きました。
「でも、どうしてそのにじが粉(こな)になって、ここにあるのかしら。
だってにじって、アーチ形(がた)をした、とても大(おお)きな物(もの)でしょう」

　それにはリリスが答(こた)えました。

読んでいただき、ありがとうございます。
次回の掲載は２０２４年４月３０日です。
　注意：作者がコメント欄を読むこと、またいかなる場合もコメントへ返信することはございません。読者の方のコミュニティーとして節度ある使用へのご理解と、ご協力に感謝いたします。