第3話

文字数 2,283文字

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しばらく歩くと

歩道の左手に小さな屋台があった。

屋台の前まで来ると

それはちょっと大きめのテーブルと

四隅の木の柱

天井には布が渡してあるだけの

簡単なものだったが

テーブルの上には

綿飴がぎっしりと並んでいた。

真っ白なのやピンク色の綿飴

それから透き通る紫色のまであった。

テーブルの後ろに丸椅子があり

その上に太った猫が目を細くして

気持ちよさそうに丸くなっていた。

きっとこの屋台の店員さんだと思ったので

猫クンに訊いてみた。

「ボク、お金持ってないんだけれど

一つちょうだい」と言うと

「ニャニャオ、ニャオニャンゴ

(ただであげるわけにはいかないね)」

「でも、お祭りのときなんて

いつも一個取って食べてるよ」

「ニャーニャニャニャンニャン、

ニャニャニャンニャン

(それはキミのパパかママが

お金を払っているからだよ)」

「それじゃあ

あとでおうちに帰ったら

お金を持ってくるからさ」

「ニャンゴ、ニャニャンゴ、

ニャーニャーニャン

(そんなの信じられないね。

今お金を払わないとダーメ)」

ボクはがっかりして

「ちぇっ、ケチ猫」

思わずテーブルの脚を蹴飛ばしてしまった。

「じゃあね、さよなら」

そう言って、ボクはまた歩き出した。

歩道から飴をつまんで

食べながら歩いて行くと右手に

また屋台があった。

さっきのと同じような小さな屋台だったが

今度のはクッキー屋さんだった。

テーブルの上には

ぎっしりとクッキーが並んでいた。

四角くて、上にイチゴジャムが

たっぷりかかっているのや

楕円形で上にチョコレートクリームが

山盛りに乗っているもの

それから、ハート形の上に

雪のような生クリームが

たっぷりと乗っているもの。

いろんなのがあって目移りしてしまう。

テーブルのうしろの丸椅子には

今度は犬がチョコンと座って

ボクを見ている。

柴犬だ。

雄一クンちで飼ってるからすぐに分かった。

ボクはワンちゃんに訊いた。

「ボク、お金持ってないんだけれど

一つちょうだい」

すると、ワンちゃんは

「ワン、ワン、ワオーン

(坊や、ひとつならあげるよ)」

「エッ、ホント? ヤッタァ」

「ワワン、ワン、ワワワンワン

(どれでも好きなのをお取り)」

「ありがとう」

ボクは、チョコレートクリームが

山盛りに乗っているなるべく

大きなクッキーを選ぶと

「ワンちゃん、ありがとう。

優しいんだね」

とお礼を言った。

「ワンワワワン、ワォーン、

ワンワンワンワワン

(どういたしまして。

あげるのは最初だけだよ。

その代わりにこれからもごひいきにね)」

クッキーをポクポク食べながら

クッキーはこんなにおいしいし

ボクはこんなに幸せだし

もう、ガミガミおばさんの所には

帰りたくないと思った。


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ここからは、パソコン向けです

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しばらく歩くと歩道の左手に小さな屋台があった。

屋台の前まで来ると、それはちょっと大きめのテーブルと四隅の木の柱、

天井には布が渡してあるだけの簡単なものだったが、

テーブルの上には綿飴がぎっしりと並んでいた。

真っ白なのやピンク色の綿飴、それから透き通る紫色のまであった。

テーブルの後ろに丸椅子があり、その上に太った猫が目を細くして

気持ちよさそうに丸くなっていた。

きっとこの屋台の店員さんだと思ったので、猫クンに訊いてみた。

「ボク、お金持ってないんだけれど一つちょうだい」と言うと

「ニャニャオ、ニャオニャンゴ(ただであげるわけにはいかないね)」

「でも、お祭りのときなんて、いつも一個取って食べてるよ」

「ニャーニャニャニャンニャン、ニャニャニャンニャン
(それはキミのパパかママがお金を払っているからだよ)」

「それじゃあ、あとでおうちに帰ったらお金を持ってくるからさ」

「ニャンゴ、ニャニャンゴ、ニャーニャーニャン
(そんなの信じられないね。今お金を払わないとダーメ)」

ボクはがっかりして、

「ちぇっ、ケチ猫」

思わずテーブルの脚を蹴飛ばしてしまった。

「じゃあね、さよなら」

そう言って、ボクはまた歩き出した。

歩道から飴をつまんで食べながら歩いて行くと右手にまた屋台があった。

さっきのと同じような小さな屋台だったが、今度のはクッキー屋さんだった。

テーブルの上にはぎっしりとクッキーが並んでいた。

四角くて上にイチゴジャムがたっぷりかかっているのや、

楕円形で上にチョコレートクリームが山盛りに乗っているもの、

それから、ハート形の上に雪のような生クリームがたっぷりと乗っているもの。

いろんなのがあって目移りしてしまう。

テーブルのうしろの丸椅子には、今度は犬がチョコンと座って

ボクを見ている。柴犬だ。雄一クンちで飼ってるからすぐに分かった。

ボクはワンちゃんに訊いた。

「ボク、お金持ってないんだけれど一つちょうだい」

すると、ワンちゃんは

「ワン、ワン、ワオーン(坊や、ひとつならあげるよ)」

「エッ、ホント? ヤッタァ」

「ワワン、ワン、ワワワンワン(どれでも好きなのをお取り)」

「ありがとう」

ボクは、チョコレートクリームが山盛りに乗っているなるべく大きなクッキーを選ぶと

「ワンちゃん、ありがとう。優しいんだね」とお礼を言った。

「ワンワワワン、ワォーン、ワンワンワンワワン
(どういたしまして。あげるのは最初だけだよ。その代わりにこれからもご贔屓にね)」

クッキーをポクポク食べながら、

クッキーはこんなにおいしいし、ボクはこんなに幸せだし、

もうガミガミおばさんの所には帰りたくないと思った。

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