第4話

文字数 1,907文字

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クッキーを食べ終わって

またしばらく行くとバス停があった。

どうして

バスも通らないのに

こんなものがあるんだろう。

それに

行き先も書いてないし時刻表もない。

バス停を眺めながらそう思っていると

バス停に声をかけられた。

「坊や、こんにちは」

バス停がしゃべるって知らなかった。

「こんにちは、バス停さん。

どうしてここにいるの?」

バス停さんは悲しそうな声で答えた。

「ある晩、酔っ払いが4,5人来てね

私を倒して

柱を力づくで曲げてしまったの。

すぐに治してもらったんだけどね」

「ふーん、たいへんだったんだね」

「そうなのよ。

だから今はリハビリ中なのよ」

「リハビリってなあに?」

「また、もとの仕事に戻るまでの訓練よ」

「どのくらいしなければならないの?」

「もう三ヶ月したから、あと三ヶ月」

残りがまだ三か月もある

ということを思いだしたのか

バス停さんは

ふーっと大きなため息をついた。

「がんばって三ヶ月したら

また元気に働いてね」

「ありがとう、坊や。

でもね、帰っても、

もう元の仕事には戻れないかもしれないの」

バス停さんの声は次第に震えてきた。

「えっ、どうして?」

「私の代わりはたくさんいるのよ。

倉庫にしまわれてしまうかもしれないの」

バス停さんはそう言うと

とうとう泣き出してしまった。

「バス停さん、元気出して。

ぜったいに元の仕事に戻れるように

ボク一生懸命祈るから。

だから泣かないで」

「うん、ありがとう。

坊やはやさしいのね」

「じゃあ元気でね」

「坊やも元気でね」

ボクは、歩道の飴をひとつ取ると

口に放り込んでまた歩き出した。

道は右に大きくカーブした。

道に沿って歩いて行くと信号機があった。

信号は赤だったけど

車が走っているわけではないので

無視して通り過ぎようとすると

信号機が怒鳴った。

「こらっ、信号は赤だぞ」

「でも、車も走ってないし人もいないよ」

ボクは不思議に思ってそう答えた。

「でも

信号は守らなきゃいけないものなんだ」

パパのお説教みたいな言い方だと思った。

「ふーん、そうなの。

おじさんの仕事はそうなんだね」

なんだかむかついたけど

とりあえず言われたとおりに

信号が青になるのを待って歩き始めた。


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ここからは、パソコン向けです

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クッキーを食べ終わって、またしばらく行くとバス停があった。

どうしてバスも通らないのにこんなものがあるんだろう。

それに、行き先も書いてないし時刻表もない。

バス停を眺めながらそう思っていると、バス停に声をかけられた。

「坊や、こんにちは」

バス停がしゃべるって知らなかった。

「こんにちは、バス停さん。どうしてここにいるの?」

バス停さんは悲しそうな声で答えた。

「ある晩、酔っ払いが4,5人来てね、私を倒して

柱を力づくで曲げてしまったの。すぐに治してもらったんだけどね」

「ふーん、たいへんだったんだね」

「そうなのよ、だから今はリハビリ中なのよ」

「リハビリってなあに?」

「また、もとの仕事に戻るまでの訓練よ」

「どのくらいしなければならないの?」

「もう三ヶ月したから、あと三ヶ月」

残りがまだ三か月もあるということを思いだしたのか、

バス停さんは、ふーっと大きなため息をついた。

「がんばって三ヶ月したらまた元気に働いてね」

「ありがとう、坊や。でもね、帰っても、

もう元の仕事には戻れないかもしれないの」

 バス停さんの声は次第に震えてきた。

「えっ、どうして?」

「私の代わりはたくさんいるのよ。

倉庫にしまわれてしまうかもしれないの」

バス停さんはそう言うと、とうとう泣き出してしまった。

「バス停さん、元気出して。ぜったいに元の仕事に戻れるように、

ボク一生懸命祈るから。だから泣かないで」

「うん、ありがとう。坊やはやさしいのね」

「じゃあ元気でね」

「坊やも元気でね」

ボクは、歩道の飴をひとつ取ると、

口に放り込んでまた歩き出した。

道は右に大きくカーブした。

道に沿って歩いて行くと信号機があった。

信号は赤だったけど、車が走っているわけではないので、

無視して通り過ぎようとすると、信号機が、

「こらっ、信号は赤だぞ」と怒鳴った。

「でも、車も走ってないし人もいないよ」

 ボクは不思議に思ってそう答えた。

「でも、信号は守らなきゃいけないものなんだ」

 パパのお説教みたいな言い方だと思った。

「ふーん、そうなの。おじさんの仕事はそうなんだね」

なんだかむかついたけど、とりあえず言われたとおりに

信号が青になるのを待って歩き始めた。

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