第18話

文字数 661文字

ペナルティエリアのすぐ外、右45度でのフリーキック。直接シュートを打つもよし、高いボールを上げてヘディングをねらうもよし。鉄がボールをセットし、上がってきたSOがゴール前で待ちかまえる。
もちろん日向FCも手は打ってくる。ボールの前には黄色いユニフォームが横にならんで壁を作り、SOには長身の9番がはりつく。
壁の上をこえる山なりのシュートを蹴るか、それとも裏をかいてジャンプした壁の下をくぐる低いシュートを蹴るか。頭をめぐらせる鉄の鼻の頭に汗の玉がうかぶ。
「おっ」
壁になった8番と6番の間にわりこむ青いユニフォーム。みどりだ。両わきからぐいぐいと押されながらも高い壁に穴を空けながら、顔を上げる。
笑っていた。ねらえるもんならねらってみろ、と言わんばかりに。鉄のハートに火がついた。壁に向かって垂直に助走を取り、右足をたたきつける。
しまった、と鉄が青くなる。思っていたよりボールの下を蹴ってしまい、高さが出ない。飛び上がるにしては高く、しゃがむにしては低い。ちょうど腰の高さに打ってしまった。
腰をひねるみどりが見えた。よけようとして8番とぶつかる。
お尻に、当たった。シュッとしたシュートが、ぼやーっとしたボールになって、あらぬ方向にコースを変える。
鉄のキックと同時に飛んだキーパーは、それを目で追うことしかできない。
ネットをゆらし、ゴールの外まではね返ってきたボールを、つめていたSOがもう一度ゴールに蹴りこむ。さけびながら。
「アリかよ、あんなの」
鉄が頭をかかえる。
「ええケツや」
レオが赤い舌を出した。
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