短編小説に目覚めたで。

文字数 1,881文字

以前から疑問に思っていたんですけど、短い小説のことを、短編っていう人と掌編っていう人が居ますよね。あれ何が違うんでしよう?
特に明確な定義は無いみたいやで。一般には掌編は短編より短いものいうことになっとるけど、じゃあ何文字以内が掌編で以上が短編とかは別に決まっとらへん。ええ加減なもんや。
そんなものなんですか。
せや。ついでに言うなら、短編と中編、長編の区別も曖昧やからな。俺は面倒やから短いもんは何でも短編て呼んでるねん。
じゃあ2000文字文学賞は短編という認識なんですね。
せやな。ところで俺はこの2000文字文学賞が最近、面白なってきてな。賞貰った訳やないんやけど、運営さんには感謝しとるねん。
ええっ!ダメですよ。感謝とか言っちゃ。運営さんにゴマ擦るつもりですか?悪口言わなきゃお客さん怒りますよ。
ゴマ擦ってどうにかなるほど、ここの運営甘ないわい。感謝したい言うんは、ええ勉強させて貰えてることに対してや。
勉強ですか。たとえばどのような勉強ですか?
前にも言うたけど、俺は正直、短編書くのはあまり得意やないねん。俺はだらだらと長い文章を書き散らす散文タイプやからな。
そういえば「空手バックパッカー放浪記」なんかも、やたらと長いですよね。
あれかて、特にプロットも長さも決めずに書き散らしていたら、いつか完結したみたいな作品やからな。俺は大体そんな感じで自由に書き散らすのが普通なんやけど、この2000字文学賞では2000字という枠が決まっていて、テーマも決まっている。その枠内で書くいうことで、俺にとっては非常に負荷のかかる仕事になるわけや。
なるほど。
俺はここでも何度か言ってるけど、NOVEL DAYSではアマチュアでもプロ意識を持って書くべきや思てるねん。プロならオーダーに従ってきっちりええ作品を仕上げなあかんやろ?そのためのええ稽古させてもろてることに感謝してるんや。
なるほど。ところで短編を書く上で特に難しいと思われることはなんですか?
短編の命はエンディングやと俺は思てるねん。起承転結の結、落語でいうところのオチの部分や。別に笑わせる必要はないんやけど、短編でこの部分が弱いと、すべてが台無しになるからな。
つまりラストシーンですね。
せやな。文学史上における短編の王といえば、例えばエドガー・アラン・ポーが挙げられるやろ。ポー知っとるか?
はい、もちろん。江戸川乱歩のペンネームの元ネタの方ですよね。
乱歩だけやないで。ポーは推理小説の始祖とも言われる作家やからな。たとえばコナン・ドイルのホームズとワトソンの関係な。よく名探偵のやや愚鈍な助手兼記述者のことを「ワトソン役」とかいうけどな、あれかてポーの「モルグ街の殺人」の名無しの記述者と名探偵オーギュスト・デュパンの関係をパクったもんやからな。
ええっ!ホームズがパクリなんですか?
すべての推理小説はその手法においてポーのパクリやねん。これは日本のマンガにおける手塚治虫と似てるな。そしてポーは単なるミステリ作家というだけではなく、短編小説家として非常に優れているんや。
そうなんですか?
ポーの短編はその質の高さにおいて、ドストエフスキーの大長編小説にも比肩するいう人も居るくらいのもんや。
ドストエフスキー?つまり読みづらい小説って意味ですかね?
ほお、なかなかええとこ突くやんけ。いや、ポーでも「黒猫」とか「黄金虫」とかデュパン物とかはそうでもないねん。しかしポーの代表作といえば「アッシャー家の崩壊」や。あれは短編のくせに読むのに気合が要るで。ラノベしか読んだことない奴なら最初の1ページで挫折するくらいや。読んだか?
いえ、ポーは全然。しかも今のお話で読む気失せましたし。
アホ言え。我慢して読み進んだらその甲斐はあるんやで。中盤からは小説から音が聞こえるし絵が見えてくるんや。俺はあんな怖い小説は他に無いと思てるで。そしてあの歴史に残るラストシーン。よくこれをありふれてるとか、ベタだとかいう間抜けが居るけど、それはこのラストシーンが見事すぎてホラー映画なんかで100万回くらいパクられたからや。ダリオ・アルジェント監督「サスペリア」なんかもそうやな。
へえ。ホラー映画好きなんで、ちょっと興味出てきたかも。
まあとにかくや。俺もせっかく短編に目覚めたんやから、いつかはああいう誰もがパクりたくなるような、名ラストシーンを書きたいもんやな。
そうですか。では、今回の毒舌問答のラストシーンはどうされますか?
え?・・あ!
まさか何も考えてないとか?
・・・・
ポーだけに黒猫置いて逃げたか・・・まだまだ道は遠そうですね。。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色