第3話 幽霊

文字数 1,228文字

それはそうと、この病院て幽霊いないのか?
もう2日もいるけど会ったことないな。
死んだら死人の仲間ができると思ったけどそうじゃないんだね?

私が運ばれた後に、交通事故かなんかで運ばれてきた男も死んだはずなんだけど、そいつに会わないな。
ちょっとイケメンだったから気になってたんだよね。
頭割れて血まみれだったけど、フフフッ。

さっき暇つぶしに病室ウロウロしてたとき、あいつの部屋も見たんだけど、そのときがご臨終の瞬間だった。
でも空中にはあいついないんだよね。
どこいったんだろ?
まさか、事故現場にまだいるんじゃ!?

病院なんて、夜になったらウジャウジャ幽霊がいて、
「あんた、なんで死んだの?」
「お見舞い何人来た?」
「この世に未練はあるかい?」
なんて挨拶があって、そして気が合ってお供えものの酒でパーティー!
なんての期待してたんだけど、幽霊そのものがいないなんて、予想外。
死人あるあるだね!フフフッ。

死んでから気がついたことたくさんあるんだよね!

まず、「呪えない」ってこと。
あのくそオヤジ!腹が立つから、病院から帰って行くときに車で事故らせてやろうかと思ったんだけど、霊にはそんな力ってないんだよね…。

生きてる人と同じで病室から出ていったら見えなくなるし、何してるかも分からなくなった。
だから遠くにいる人に霊が危害を加えることは難しい。
私に力がないだけかもしれないけどね。

次に、「祈ってくれたらその人のことが見える」ってこと。
高橋も孝太郎も真島も新田も病室には来てないけど、あいつらが私のこと祈った瞬間、ヤツらが何しているか分かるようになるの!
”見える”っていうほうが正確かな。
でも祈りを止めたら見えなくなる。

そして最後に、これはあまり言いたくないんだけど、「ヤりたくなったらヤれる」ってこと。
”ヤル”ってもちろんエッチのこと。ヘヘッ。

恥ずかしいんだけど、昨日私エッチしちゃった。
相手は”想像”だよ。
でも自慰行為じゃないんだ。
ちゃんと自分好みの男が現れて、自分が望むようなエッチをしてくれた。

ほんとうに感じるしキモチイイし、実感もある。
ただ、その男は幽霊じゃないんだよね、ちゃんと”実物の男”だと思う。

そんで、酒やタバコや薬だって思い通り!
死んでから酔ったりラリったりできると思わなかった!
サヤもママも帰ったあとだよ。
さすがにみんながいてるときにそれはできないよ。

でも、好きなことしたら、なぜか後で苦しくなるんだよね。
苦しいからまたしたいことするんだけど、また苦しくなるの。
生きてるときはもうちょっといいもんだったんだけどね、酒も男も。

死んだら仙人みたいになんでも思いのままだと思ってたけど、けっこう不便。


あ、そんなこと考えてたら、またエッチしたくなってきちゃった。
コツがあるんだよね。
こう”念じると”というか、強く意識するの。

そうしたら……アンッ!
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