第5話 目覚め
文字数 866文字
白昼夢なのかわからなくなるが、多分現実だと思うことにする。
そのほうが気分が落ち込まずに済む。
これ以上落ち込みようがないんだけどな。
またもや夢の続きをみる。
タカハシはバンドでツアーをしていた。
旅館のような所で打ち上げをしていたが、荷物をまとめると言って席を立つ。
「?」
ギターが10本以上ある。後から気付いたが本当に現実で持っているものだった。
どうやって持ってきたのか記憶にない。少なくとも機材車に積める量ではなかった。
悩んでいたが、仕方がない。
「宅配便で送るか」
場面が変わった。何故か新幹線に乗っている。
「やばい・・・・・」
自分の顔から血の気が引いて行くのがわかった。
「ギター旅館に忘れたかも・・・・・・」
「おお、マジかよ」
配送に出した記憶も車に詰め込んだ記憶もなかった。
タカハシは現実で「本当に」空港でスーツケースを忘れたことがあるのだ。
これも脳が鈍くなったと思う原因だった。
「またやっちゃったよ・・・・旅館に電話してくる!」しかし名前が思い出せない。
やはり頭が鈍くなっている。慌てふためいてスマホで調べる。
「ここだよ」
誰かが前の席からスマホを見せる。
「ありがとう!ちょっと行ってくる!」
時計を見ながら電話を掛ける。
「早く出てくれ・・・・頼む・・・・・」
恐怖で鳥肌が立ち、冷や汗をかいていた。
また場面が変わる。
家の真ん前でバスに乗っていた。どうやら眠ってしまったようだ。
「ん?・・・・ああ!・・・降ります!すみません降ります!」
部屋に入ると疲れていたのだろう、そのまま布団に飛び込んだ。
ふと思い出す。
「あれ?ギターどうしたっけ?」
荷物はリュックだけだった。
「電話して・・・・あれ?したか?・・・・・あ・・・不味・・・・」
泥のように纏わりつく眠気が思考を停止させた。
体が引き摺り込まれて行くように目の前が真っ暗になる。
「ギター!!!!!!!!!!!」
その瞬間飛び起きていた。自分の声で起きるなんて生まれて初めてだ。
玄関に目をやる。ギタースタンドに振り返る。
全部・・・・・・ある・・・・・・・。
「夢??????」
何故か汗は止まっていた。