第8話  私がキャンセルをしなかった理由

文字数 495文字

 その理由は、もし、キャンセルをしてしまったら、当日は満室のため、万が一、彼女から再び問い合わせが入った時、100%とれないことは明白であったためだ。

 そして、私の気持ちの中で、ぜひ彼女の父親が、8月16日までに退院をしてほしいと願っていたためだ。

 ただ、梨奈の電話での寂しそうな声が、ずっと気にかかっていた。

 
 一週間後の8月9日、私は彼女の自宅へ電話を入れてみた。

 しかし、その日は終日、家には誰もおられなかったようで連絡はつかなかった。


 その後も、私は一日おきに電話を入れて、ようやく8月13日に連絡がついた。

 その日、自宅には彼女の母親が電話に出た。 私がご主人の病状について聞くと、

 「ご心配をかけまして、申し訳ございませんでした。また、せっかく予約を入れていただいたのに、キャンセルをしてしまいまして、申し訳ございません。皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました」と謝罪の言葉だけで、詳しいキャンセルの理由については、話してくれなかった。

 ただ、入院をしたご主人が8月16日に仮退院できることを教えてくれた。

 そして、今、梨奈が京都のF病院へ見舞いに行っていることも話してくれた。

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