第15話  梨奈からの手紙

文字数 416文字

 夏も終わろうとしていた9月下旬に、梨奈から手紙が送られてきた。

 手紙の内容は、満室にもかかわらず泊めてもらったというお礼、
そして、残念ながら父の洋が、9月20日に亡くなってしまったこと....

 梨奈の父が8月1日に再入院した時、医者から悪性の癌のため、あと長くて2ヶ月と言われていたのだ。

 しかし、最後に三人で思い出を作りたかったため、父の洋には内緒で母と相談をして、このホテルに宿泊をしようと決めていたとのことであった。

 洋は亡くなる直前に、
 「また、この前のホテルにみんなで行こうな」という言葉を残したそうだ。

 そして、最後に、父は苦しかったはずなのに、亡くなった時の顔は微笑んでいるように見えたと書かれていた。

 梨奈は父親の遺言どおりに、毎年、8月16日に(大文字の送り火)梨奈と母親が父に逢うためにこのホテルに宿泊をされている。

 もちろん、部屋番号は816号室である。



                          終

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