第1話 両親へのプレゼント
文字数 544文字
あの話は、今から18年前の7月中旬にさかのぼる。
夕方近くに、見た目、高校生らしき女性が少し不安そうな顔をしてフロントへやって来た。
最初、私は彼女が修学旅行生の中の一人かと思ったのだ(当日、ホテルに修学旅行生が宿泊をしていたため)
しかし、実際はそうではなかった。
「フロントの責任者の方にお会いしたいのですが....」とその女性が私に言った。
その日、宿泊の責任者である松浜課長が休みであったため、
「私が今の責任者ですが、もし、私で宜しければお伺いしましょうか?」と言って、フロントカウンター近くにあるインフォメーションデスクへ彼女を案内し椅子に座ってもらった。
私も彼女の前に座ることにした。 少し沈黙があった。
「今度、両親をこちらのホテルへ宿泊をさせてあげたいのですが、どのようにすればいいのか分からなかったので、直接ここへ来ました」と彼女が言った。
「失礼ですが、あなたのご住所はどちらで、今日は、どなたかと来られたのですか?」と私が尋ねると、
住所などを聞いた理由は、彼女が確実に未成年と分かったため、トラブルなどを防ぐためにも確認をしたのだ。
「家は彦根(滋賀県)で両親と三人で住んでいます。ここまでは、私一人で、JRと地下鉄で来ました」と、彼女は正直に話してくれた。