第14話  816号室のカードキー

文字数 427文字

 翌日の10時頃、梨奈と彼女の両親がチェックアウトに来られた。

「おはようございます。昨日はごゆっくりお休みになられましたでしょうか?」と尋ねると、

「おかげさまで、ゆっくりと休ませて頂きました。また、お花までいただき、ありがとうございました。ほんとうにお世話になりました」と梨奈の母親が頭を深々と下げた。

「今回はご家族でご宿泊いただき、ありがとうございました。また、来年もぜひお待ちしております。それから、もしよろしければ、お二人のご結婚記念日が、8月16日ということで、この816号室のカードキーをお持ち帰りください」と私が言うと、

「ありがとうございます。そこまで考えて頂いていたなんて、私たち誰もが気付いていなかったです」と梨奈の母親が言った。

「来年もぜひ、このホテルにみんなで来たいね」と父の洋が言うと、

「そうだね、また、家族で来ようね」と梨奈は少しうつむき加減で言った。

私には梨奈が涙目になっているのを、父に勘付かれないようにしているように見えた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み