第15話 人狼ゲーム

文字数 1,163文字

 山本君の葬式の帰り。
「せっかく集まったんだしさ、これからユウトんちに遊びにいってもいい?」
「ぼくんち? 別にいいけど」
 じゃあおれもおれもと、いつものグループでぼくの家で遊ぶことになった。
 葬式のあとに遊ぶとか不謹慎かもしれないけど、正直、山本君はおとなしすぎて、だれとも仲良くなかったと思う。
 だから突然事故で死んだと言われても、みんな「かわいそうだな」以上の気持ちは持てなかった。
 もう少しきっかけがあれば、ぼくらも山本君と一緒に遊んだりしたかもしれないけど、死んじゃったからしかたない。

「なにして遊ぶ?」
 ぼくが聞くと、だれかが「人狼ゲームやりたい!」と言った。

「やろうやろう!」
「おれマジ強いぞ」

 みんなが賛成して、さっそく始めることにした。
 ぼくがカードを配り、配役が決まる。

「占い師だれだ?」
「おれwww」
「いやおれもですけど?」

 ゲームは盛り上がった。
 人狼を当てたやつは勝利のおたけびを上げたし、人狼が勝つとジャンプして喜んだ。
 
 でも、十何度目かのゲームが終わり、どうにもぬぐえない違和感を、ぼくは口にしてしまった。
「なんかさ……おかしくない?」
「なにが?」
「ぼく、村人だったよね?」
「うん」
「シンジが占い師で、タクヤが騎士で、サトシとリョウセイも村人で、人狼がシュウタだよね?」
「そうだよ」
「じゃ、さっき霊能者やったのって誰?」
 みんな思い出せないようで、「あれ?」「えっと」と首をかしげる。
「……ぼくずっと、役職のカード、7人分配ってるんだけど……」
「は?」
 シンジがさらに首をかしげる。
「でも、ここには6人しかいないんだ」
 なにを言っているのかわからないらしく、ぼく以外の5人がきょとんとする。
「はあ? どういう意味?」
 タクヤが聞いてくる。
「だから、カードは7枚なのに、6人しかいないんだって!」
 思わず声が大きくなる。
「そんな怒鳴るなよ、なんだよいきなり」
「6人でいいじゃん」
「やべえ、ぼけた?」
 みんなが半笑いになるけど、ぼくは「だから、そうじゃなくて!」と泣きたくなった。

 この部屋にはもうひとりいる。
 すごく人狼ゲームを楽しんで、盛り上がってるだれかが。
 たぶん……生きているうちには、このゲームをできなかっただれか。

「カードはさっきから7人分なんだよ!ほら! いーち、にー、さん、よん、ご、ろく、なな!」
 指差し確認しながら数える。
 畳の上には、7人分、7枚のカード。
 ぼくの必死の形相に、シンジがやれやれといった顔で「わかったわかった」と肩をすくめる。
「とりあえず1枚ずつとろうぜ。それで1枚余ればいいんだろ?ユウト、おまえ疲れてんだよ。勉強のしすぎ」
「それな!はは」
「よっしゃ、みんなカードとれよ」
「オッケー」
「おれこれ!」

 手がいっせいにカードにのびて、7枚のカードがなくなった。
 
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