第4話 悪夢観音
文字数 861文字
夢観音は、悪夢を見せる仏様だ。
悪い行いをした人に、夢を見させて罰を与えるといわれている。
「そんなのうそに決まってる。バカみたい」
梨々香がユミに言った。
「でも、弱いものいじめは夢観音の罰が当たるってお母さんが言ってたし……」
夢観音様は小学校の裏の神社に祀られていて、この町の大人はことあるごとに「悪いことをすると、夢観音様の罰が当たるぞ」と言っていた。
「別に悪夢くらい見たっていいし」
梨々香はいじめっ子で、気の弱いクラスメイトをいつもいじめていた。それを学級委員長のユミが「悪いことをすると、夢観音様の罰が当たるよ」とたしなめたのだった。
だが、そんなことを信じない梨々香には、ちっとも効果はない。
(ふん。ユミって生意気よね。今度はユミをいじめてやろうっと)
そう思いながら眠りにつくと……。
朝、起きると家の中は静まりかえっていた。
「お母さん? お父さん?」
家族はぐっすり眠っていて、どんなにゆさぶっても起きてくれない。
「お母さん! 起きて!」
テレビをつけると、アナウンサーがつっぷすように眠っていた。
ほかのチャンネルでは、コメンテーターや芸人が床に倒れるように寝ている。
外に出ると、通勤途中らしいサラリーマンや通学途中の高校生が、スマホを持ったまま地面に横になっている。
「起きてー! 起きてよー!」
みんな眠ったまま、起きてこないのだ。
(もしかして……夢観音の悪夢って、私以外が夢の世界に連れていかれてしまうってこと?)
「ごめんなさい、夢観音様、もういじめはしませんから、どうぞみんなを起こしてください……!」
泣きながら祈ったが、だれも目を覚ますことはなかった。
それから数週間後。梨々香のクラスではこんな噂が流れていた。
「梨々香ちゃん、まだ昏睡状態なの?」
「そうみたい。でも、自業自得よね」
「ユミちゃんを階段からつき落とそうとして、自分が落ちちゃったんでしょ?」
「夢観音の罰が当たったんだよ、いじめっ子だから」
「今も、どんなひどい悪夢を見ているのかわからないくらい、ずっとうなされてるらしいよ……」
悪い行いをした人に、夢を見させて罰を与えるといわれている。
「そんなのうそに決まってる。バカみたい」
梨々香がユミに言った。
「でも、弱いものいじめは夢観音の罰が当たるってお母さんが言ってたし……」
夢観音様は小学校の裏の神社に祀られていて、この町の大人はことあるごとに「悪いことをすると、夢観音様の罰が当たるぞ」と言っていた。
「別に悪夢くらい見たっていいし」
梨々香はいじめっ子で、気の弱いクラスメイトをいつもいじめていた。それを学級委員長のユミが「悪いことをすると、夢観音様の罰が当たるよ」とたしなめたのだった。
だが、そんなことを信じない梨々香には、ちっとも効果はない。
(ふん。ユミって生意気よね。今度はユミをいじめてやろうっと)
そう思いながら眠りにつくと……。
朝、起きると家の中は静まりかえっていた。
「お母さん? お父さん?」
家族はぐっすり眠っていて、どんなにゆさぶっても起きてくれない。
「お母さん! 起きて!」
テレビをつけると、アナウンサーがつっぷすように眠っていた。
ほかのチャンネルでは、コメンテーターや芸人が床に倒れるように寝ている。
外に出ると、通勤途中らしいサラリーマンや通学途中の高校生が、スマホを持ったまま地面に横になっている。
「起きてー! 起きてよー!」
みんな眠ったまま、起きてこないのだ。
(もしかして……夢観音の悪夢って、私以外が夢の世界に連れていかれてしまうってこと?)
「ごめんなさい、夢観音様、もういじめはしませんから、どうぞみんなを起こしてください……!」
泣きながら祈ったが、だれも目を覚ますことはなかった。
それから数週間後。梨々香のクラスではこんな噂が流れていた。
「梨々香ちゃん、まだ昏睡状態なの?」
「そうみたい。でも、自業自得よね」
「ユミちゃんを階段からつき落とそうとして、自分が落ちちゃったんでしょ?」
「夢観音の罰が当たったんだよ、いじめっ子だから」
「今も、どんなひどい悪夢を見ているのかわからないくらい、ずっとうなされてるらしいよ……」