転生する黄金の虫

文字数 669文字

 さて、『夏なんか来なければ良いのに』
と言いながら。
やりたくもない、夏休みの自由研究で俺の仲間俺の彼女をピンで付けているお前。
貴様のお陰で、俺は転生の為の相手をまた探さなくちゃ成らなくなったのだぞ。
 尤も俺が、その個体に転生する訳ではないのだが。誰かの為の身体を、生まなければ成らなかっただけなのだが・・・・。
お互い様でね。

 まったく、都会のガキはカブト虫やクワガタやチョウなんてものは、中々見付からないからと言って。何でマイナーな黄金虫の俺達に白羽の矢を立てやがったのかね。
 まっ、そのうちキッチリ借りは返させてもらうぜ。と俺は飛び立った。

 今、俺の色は黄色。次回の転生で間違い無く黄金に成るはずだった。
 知らないだろうが、俺達カナブンは、いや、コガネムシとかガネブンとか呼び方は沢山あるが。何千年も何万年も前から、この地球に住み着いている。
昆虫学者に言わせると、同じ環境で進化したのに何故、昆虫だけ外骨格なのだ?と疑問を持つそうだ。
だから、他の天体からやって来たのでは?
と言う人もいるそうだ。

 そんなのは知らない。俺達は俺達だ。
しかも、この星の食物連鎖にちゃんと入っているのだから。今更、そんな疑問はどうでも良い事だ。
 話が逸れた。
俺達は生まれると最初は緑、次に赤、そして黄色、更に黒や赤黒などに変わってゆく。
それが転生の印なのだ。
 俺は既に100年は転生している。
遂に最高級、最も階級の高い黄金へと転生するのだ。
 だからと言って、大した事はない。
何が変わると言う訳でもない。
唯、周りのガキ共から、尊敬されると言うだけだ、確か・・・。
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