第六話 魔法訓練とナギナタ

文字数 2,360文字



少し遅い朝食を取ったあと母上と庭で魔法の訓練をする事になった。
ただ僕に何の加護が授かったのか、そもそも加護を受けれているかも分からない為、色々試してみるようだ。
母上は気合十分で何処から引っ張り出して来たのか身の丈位の綺麗な杖を持ってきた。
白くて先端には綺麗な青い宝石のような玉が付いていた。
プロキオンは杖に興味津々だった。

先ずいつもの様に純粋な魔力を制御する訓練からだ。
この訓練はプロキオンもする。
胸の前で拳間隔で掌を向かい合わせる。
全身の血の流れに集中してその流れに魔力を感じる。全てを掌に集中させるイメージで…
段々と魔力が溜まりが掌に集束する。
この魔力は属性がまだ乗っていないので無属性ということになる。
この純粋な魔力は無害で勝手に霧散していくのだと教わった。
プロキオンは僕ほど労せず魔力溜まりを作る。
それをポンポンと作り霧散させて遊ぶ余裕があるのだ。
魔法のセンスは母上譲りと言える。
天才かも。と、兄ながら誇らしかった。

「2人共魔力量は十分ね」

嬉しそうに母上が話す。

「じゃあシリウスは水の魔法を使って見ましょ。プロキオンはそのまま魔力操作の練習ね」

水と風は母上が得意な魔法だ。

「母上、水魔法を使って他の星霊様に嫌われないでしょうか?」

「大丈夫よ。もう加護を受けてるから生活魔法程度では嫌われ無いわよ」

「僕は…しっかり加護を受けれているのでしょうか?」

「私は信じてるわ」

優しくも真っ直ぐな母上の笑顔に、良くわからない色々な不安がや迷いが一気に吹き飛んでしまった。

「先ずは水をイメージして。出来るだけハッキリと。どんなイメージの水でも良いけど、先ずは自分が好きな水のイメージが良いと思うわ」

好きな水…今まで水を好き嫌いで考えたこともなかった。
好きな水かぁ。

剣術の後の喉の乾きを癒やす水…
母上の水魔法、癒やしの水…
好きな水は…優しい水…
あ、変な感じがする。
魔力に水の流れを感じる…
掌に濃い水の魔力を感じる。
どんどん強くなっていくのが分かる。
でもなかなか水が出来ない。出てこない。

「不思議ねぇ。十分過ぎるほどの水の魔力を集束しているのに具現化出来ないわねぇ」

そうそれだ。何故だか具現化出来ない。
無属性の純粋な魔力なら掌と掌の間に魔力溜まりが出来るのに。
母上は本来ならもう十分出来ている筈と言うがどういう事だ。
急に不安になった。

「でも凄いわシリウス。具現化は出来てないけど生活魔法どころか私と同じ位の水魔力を集めてるわ」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ!とても大きな魔力を感じたわ」

少し嬉しいと同時に、具現化出来ない歯痒さにヤキモキした。

「次は風の魔法を使って見ましょう」

そうだ、水の加護が無かっただけかも知れない。
何か他の魔法なら使えるかも知れないという希望にテンションが上がり、もっと色々な事を試したくなった。

「じゃあ今度は水と同じ様に風をイメージしてみて」

「風は…見えないのでどうやってイメージしたら良いでしょう?」

「何も見えるモノだけでイメージするんじゃないのよ?
体を抜けていく温かく優しい春の風。
蜃気楼が立つ熱い夏の風。
全てを吹き飛ばす力強い秋の風。
冷たくて鋭い冬の風。
色々な風が有るわ。
あなたも知っている筈よ。イメージしてみて」

見えるものだけじゃない。か…
僕の好きな風。

力強くて天高く舞う風。
どこまでも、どこまでも飛んでゆく自由な風……
ウ~ン……
具現化出来ない。

「凄いわシリウス〜。そんなに風の魔力を集束出来るなんて〜」

具現化出来ていないのだが何故か母上は大興奮している。
母上曰く、僕の水と風の魔力量を見るに2つとも加護持ちの域らしい。
つまり魔力量と魔力集束量は完全なギフト者に匹敵するらしい。

それから昼食を挟み火や土、光や闇まで練習した。
プロキオンは途中疲れて寝てしまっていたが、それを横目に気づけば夕方近くまで魔法の訓練は続いたが楽しさの余り時間の経つのも忘れる程に熱中した。
そして父上が帰宅した。


「只今、帰ったぞ〜」

その瞬間母上が父上に飛び付いた。
意表をつかれた父上は困惑してたが母上が今日の魔法訓練での出来事を興奮したように話した。
要約すると、
「二人共天才」
「シリウスは、具現化は出来ないけど全属性加護持ち並み以上の魔力操作量」
という親バカぶりを遺憾なく発揮していた。
しかし最初は困惑していた父上の顔が晴れていくのが分かった。
間断なくしゃべり続け、母上の興奮が沈静化しやっと父上が解放された。

「シリウス、お前にプレゼントだ」

家に入ってきた時から気にはなっていたが、予想は当たった。
父上が木の槍を買って来てくれた。
不思議な形の木の槍だった。
この形の武器を「ナギナタ」と言うらしい。
突く切る叩く払う、全てに万能でその取り扱いの容易さから女性でも扱える武器らしい。

「本当はハルバードかブージが良かったんだが、コイツならお前の体に負担が掛からないだろう」

っと言うことだ。
実際手に取ってみた印象は「長い!」

「父上ありがとうございます」

「武器毎に使い勝手を訓練しなきゃ使い物にならん。明日からそれを使ってまず素振りで体に馴染ますと良いだろう」

早くこのナギナタを振ってみたい衝動を抑えつつ、何時でも見える場所に立て掛けた。
父上はプロキオンにもプレゼントを買ってきていた。

「プロキオン、これを」

「わぁ!新しい本だあ!父上ありがとうございます!!」

嬉しそうに年齢不相応な分厚い本を抱え早速母上に自慢しに行った。

「……カペラには、これを」

父上が何か照れくさそうに母上へプレゼントした。

「まあ、嬉しいわ」

イチャつき始めた。
僕等兄弟は何を見させられているのだろう…
只、父上的には子供達だけにプレゼントというのも気が引けたのだろう。

暫くして家族の興奮が沈静化した処でようやく夕飯である。家族揃っての食卓。

これが我が家のルールである。


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