パン屋の国ではパン屋が飢える
文字数 1,901文字
ある日、パンが大好きな王様がパンの国を作ろうと思い立ちました。
王様は広大な土地を用意して、本国からあらゆるパンの材料を取り寄せられるようにして、世界中にお触れを出しました。
「求む!パン職人!!
我が国ではプロ、アマ問わず、多くのパン職人を募集する
我こそはと思う者は集まれたし!」
すると、世界中から腕自慢のパン職人が、パンの国に集まってきました。
パン職人たちは、自分の思い描いている通りの自分のお店を建てて、そこで毎日、自分が一番美味しいと思えるパンを焼き続けました。
パン職人たちの中には、色んな個性の職人がいます。これはと思える自慢のパンだけを並べる職人。毎日、作った分だけパンを並べる職人。パンを作る過程を見せる職人。自分のパンが人気のあるパンだと宣伝する職人。
でも、どの職人もパンが大好きで、パンを作ることが大好きなのは変わりません。
こうしてパンの国には、パン職人がどんどん集まり、ずらりとパン屋が並びます。
ある日、パンの国にやって来た一人の職人が、パンの国を眺めて言いました。
「ここには、素敵なパン屋が沢山並んでいるなぁ。ここなら僕のパンを美味しく食べてくれる人が居るかもしれない」
彼はパンの国に小さな店を開いて、パンを焼き始めました。彼は食べてくれる人の笑顔を思い浮かべて毎日、楽しくパンを焼きます。
でも、お客さんはなかなか来てくれません。その代わりに、よそのパン屋の職人がショーウィンドーの外から店内を眺めてゆきます。彼には職人たちがのぞき見する理由が分かりませんでした。彼は外のことを気にせずにパンを焼きます。
何日もお客さんが来ないので、彼は考えました。
「何でお客さんが来ないのだろう?毎日、美味しいパンを焼いているのに」
相変わらず、よその職人が数人、ショーウィンドーの外からのぞき見してゆきます。彼にはそれも不思議に思いました。
「僕は美味しいパンを焼いているし、店内だって清潔で綺麗にしているのに、何でお客さんが来ないのだろう?」
彼には、お客さんに来てもらう為に何をして良いのかが解りませんでした。なので、発想を逆転させました。
「僕のパンを知ってもらう前にお客さんのことを知ろう」
彼はそう言うと、パンの国を歩いてみました。歩いてみて分かったのですが、この国にはパン屋しかありませんでした。王様が集めたのはパン職人なのですから、当然といえば当然です。
「パン職人にお客さんになってもらうには、どうすれば良いのだろう?」
彼には分からなかったので、また、発想を逆転させました。
「僕はここに来てから他のお店のパンを食べただろうか?」
彼はここに来てから他のお店がどんななのか、見て歩きました。勿論、ショーウィンドーの外から店内をのぞきました。
「なるほど、あれはそういう意味なのか」
そして、彼はここに来てから他のお店のパンを食べていないことに思い当たりました。
「何で、僕は他のお店のパンを食べないのだろう?」
彼は考えました。
「第一に、他のパンを食べて、影響を受けたらその職人に失礼だ。いや、アイディアを盗んだとか、真似をしたとか言われたら困るではないか。それ以上に、他の職人に影響を受けて真似てしまったら自分で自分が許せない。僕は自分が弱いことを知っている。それに・・・」
彼は、次の言葉が恥ずかしくて躊躇しました。
「それに、僕のパンよりも美味しいパンは、そうは無い。わざわざ、美味しくないパンを食べたくない。・・・それに、僕のパンよりも美味しかったら悔しいじゃないか」
彼は、自分のことが少しだけ情けなくなりました。
「仕方がないじゃないか。僕はパンが食べたくて、ここに来たわけじゃない。パンを食べてもらいたくて、ここに来たのだ」
彼は他のパン職人も同じ気持ちなのかもしれないと思い、途方にくれました。
パンの国の王様がため息をついて、大臣に言いました。
「我が国は、思うように繁栄しないのう。大臣、良い知恵は無いか?」
大臣は困った様にヒゲを引っ張ってから応えます。
「そうですなぁ・・・。コンテストを行ってはいかがです?」
興味を持った王様が言いました。
「ふむ、どんなコンテストじゃ?」
大臣は悪い顔をして答えます。
「その季節に似合ったお題を出して、それをイメージするパンを作るコンテストはどうですか?」
「ふむ、良いのう」
「食材を三つ指定して、その三つを使ったパンを作るコンテストというのも面白そうですが」
王様は笑顔になって、大臣に命じます。
「これより、両コンテストを催す準備をせい。そして、職人たちにその旨を触れて回れい」
王様は広大な土地を用意して、本国からあらゆるパンの材料を取り寄せられるようにして、世界中にお触れを出しました。
「求む!パン職人!!
我が国ではプロ、アマ問わず、多くのパン職人を募集する
我こそはと思う者は集まれたし!」
すると、世界中から腕自慢のパン職人が、パンの国に集まってきました。
パン職人たちは、自分の思い描いている通りの自分のお店を建てて、そこで毎日、自分が一番美味しいと思えるパンを焼き続けました。
パン職人たちの中には、色んな個性の職人がいます。これはと思える自慢のパンだけを並べる職人。毎日、作った分だけパンを並べる職人。パンを作る過程を見せる職人。自分のパンが人気のあるパンだと宣伝する職人。
でも、どの職人もパンが大好きで、パンを作ることが大好きなのは変わりません。
こうしてパンの国には、パン職人がどんどん集まり、ずらりとパン屋が並びます。
ある日、パンの国にやって来た一人の職人が、パンの国を眺めて言いました。
「ここには、素敵なパン屋が沢山並んでいるなぁ。ここなら僕のパンを美味しく食べてくれる人が居るかもしれない」
彼はパンの国に小さな店を開いて、パンを焼き始めました。彼は食べてくれる人の笑顔を思い浮かべて毎日、楽しくパンを焼きます。
でも、お客さんはなかなか来てくれません。その代わりに、よそのパン屋の職人がショーウィンドーの外から店内を眺めてゆきます。彼には職人たちがのぞき見する理由が分かりませんでした。彼は外のことを気にせずにパンを焼きます。
何日もお客さんが来ないので、彼は考えました。
「何でお客さんが来ないのだろう?毎日、美味しいパンを焼いているのに」
相変わらず、よその職人が数人、ショーウィンドーの外からのぞき見してゆきます。彼にはそれも不思議に思いました。
「僕は美味しいパンを焼いているし、店内だって清潔で綺麗にしているのに、何でお客さんが来ないのだろう?」
彼には、お客さんに来てもらう為に何をして良いのかが解りませんでした。なので、発想を逆転させました。
「僕のパンを知ってもらう前にお客さんのことを知ろう」
彼はそう言うと、パンの国を歩いてみました。歩いてみて分かったのですが、この国にはパン屋しかありませんでした。王様が集めたのはパン職人なのですから、当然といえば当然です。
「パン職人にお客さんになってもらうには、どうすれば良いのだろう?」
彼には分からなかったので、また、発想を逆転させました。
「僕はここに来てから他のお店のパンを食べただろうか?」
彼はここに来てから他のお店がどんななのか、見て歩きました。勿論、ショーウィンドーの外から店内をのぞきました。
「なるほど、あれはそういう意味なのか」
そして、彼はここに来てから他のお店のパンを食べていないことに思い当たりました。
「何で、僕は他のお店のパンを食べないのだろう?」
彼は考えました。
「第一に、他のパンを食べて、影響を受けたらその職人に失礼だ。いや、アイディアを盗んだとか、真似をしたとか言われたら困るではないか。それ以上に、他の職人に影響を受けて真似てしまったら自分で自分が許せない。僕は自分が弱いことを知っている。それに・・・」
彼は、次の言葉が恥ずかしくて躊躇しました。
「それに、僕のパンよりも美味しいパンは、そうは無い。わざわざ、美味しくないパンを食べたくない。・・・それに、僕のパンよりも美味しかったら悔しいじゃないか」
彼は、自分のことが少しだけ情けなくなりました。
「仕方がないじゃないか。僕はパンが食べたくて、ここに来たわけじゃない。パンを食べてもらいたくて、ここに来たのだ」
彼は他のパン職人も同じ気持ちなのかもしれないと思い、途方にくれました。
パンの国の王様がため息をついて、大臣に言いました。
「我が国は、思うように繁栄しないのう。大臣、良い知恵は無いか?」
大臣は困った様にヒゲを引っ張ってから応えます。
「そうですなぁ・・・。コンテストを行ってはいかがです?」
興味を持った王様が言いました。
「ふむ、どんなコンテストじゃ?」
大臣は悪い顔をして答えます。
「その季節に似合ったお題を出して、それをイメージするパンを作るコンテストはどうですか?」
「ふむ、良いのう」
「食材を三つ指定して、その三つを使ったパンを作るコンテストというのも面白そうですが」
王様は笑顔になって、大臣に命じます。
「これより、両コンテストを催す準備をせい。そして、職人たちにその旨を触れて回れい」