ぼっちハロウィン

文字数 987文字

 今年のハロウィンは日曜日。例年通りだったら渋谷や六本木辺りはお祭り騒ぎのどんちゃん乱痴気騒動になっていただろう。まぁ、実際今年は数年前みたいにDJポリスが出動するほどではなさそうだが、いつの時代も騒ぎたい人間は一定数いる。
 さて、日付変わって今日はそのハロウィンだ。独身、ひとり暮らし、彼氏なしの私に、ハロウィンなんて無縁もいいところ。まぁ彼氏がいようが家族がいようが、この日本という国は本来ハロウィンとは無縁の国だったはず。それがなんでコスプレ祭り状態になったんだ。
 いや、いいんですよ? 別に。ハロウィンで浮かれる人たちに嫉妬してるわけじゃないんです。私だって、子どものときはコスプレしましたとも。英会話教室でハロウィンパーティーをやったときにね。大体さ、ハロウィンって、そんなにド派手にやるもんじゃないのよ。それがいつからテレビでニュースになるくらいの一大イベントになったんだか。十月三十一日は祝日じゃないんだからね? 今年はただのに・ち・よ・う・び!
 ……とはいえ、海外のハロウィンにはやや興味がある。なんとなくネットで調べてみると、ハロウィンにはちょっとしたゲームをするとか。なになに? リンゴをバケツに浮かべて、それを口で取ると。ふうん。このくらいだったら私でもできそうね
 私は立ち上がると、風呂桶に水を入れて、そこへ冷蔵庫に入っていたリンゴを1個浮かべてみた。これを手で使わずに口で取るのか。楽勝でしょ。
 風呂桶に顔をつけると、口をあふあふしながらリンゴを取ろうとする。ん? んんっ? なかなか取れないぞ。あふあふ。リンゴに口をつけると、回転してうまく歯でつかむことができない。そもそもリンゴは口より大きいから、手を使わずに取るなんて無理なんじゃないか?
 ……深夜一時にもなる時間に、私はひとりで一体何をしてるんだ。アホか。濡れた前髪をタオルで押さえると、我に返る。――素面で何をやっていたんだ。
 スマホの検索エンジンを見ると、ハロウィン仕様にデザインが変わっている。うん、私にはこのくらいのハロウィンがちょうどいい。
 ハロウィンはもともとお盆みたいなもんなんだし、コスプレしている人たちは盆踊りでも踊っているような気分なのだろう。
 そうひとりで納得して、私はリンゴを手で取ってかじった。このリンゴは実家の母が送ってくれたやつ。私にとって最高のTreatだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み