三章 パラグラフリーディング

文字数 632文字

 炊馬経子の話は恐ろしいものだった。作間藤三郎が大量の変死体を見つけていたことを知る。急死した者は商人が多かった。彼らは死の直前、覆面の男と接触していたらしい。藤三郎は流行病ではなく、人為的な犯行だと怪しんでいた。
 別府は水騒動とは関係のない問題だと判断する。変死体については不明な点が多く、ふかくは考えなかった。経子とわかれる。宿屋にはいる。一部屋、借りた。未堂棟とは同室となった。部屋の窓からは大村家の下屋敷が見えていた。直上には蛇崩池が広がっている。夕餉をとる。
 別府は宿屋の主人に蛇崩町の歴史と殺された藤三郎の血縁者の話をきいた。主人の話は興味深かった。炊馬経子の供述と食いちがいがあったのだ。
 経子は大村家に女中として雇われていたが、彼らに不満をもっているようだった。ほかの三人も藤三郎の死によって、悪影響が起きていたらしい。作間政信は義兄の死から賭博と酒に溺れていた。経子は生活面で苦しんでいた。瑞木新七は蛇崩町の治安悪化を心配していた。上野左衛門は急に大村家の領主と接触するようになっていた。
 四人とも不穏な変化を抱いていた。
 別府は大事件が起きないように、大村家にしかるべき対応をとらせることを決意する。あすに備えて、就寝した。しかし、大事件は決心をした当日に起きてしまった。
 別府は夜中に轟音で目をさました。窓の外を見た。蛇崩池の水門があけられたらしい。濁流が大村家の下屋敷を飲みこんでいた。遠目からでも倒壊が確認できた。
 大惨事の幕開けだった。
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