十章 パラグラフリーディング

文字数 501文字

 別府が起きたとき、すでに未堂棟は覚醒していた。宿屋を出る。ふたりで行人坂へと向かった。別府は前日、上野が井戸に隠れ、人垣にはいったと推理した。しかし、井戸のなかは、泥水でいっぱいだった。下屋敷側の木樋から泥水が流れこんでいたのだ。
 人間が隠れていたというトリックは不可能だと判明する。
 未堂棟は九兵衛に下屋敷一帯の見張りをたのんだ。別府をつれて、西区画の剣術道場へと向かった。佐々木のかよっていた道場である。未堂棟は道場の師範代に佐々木のことをきいた。佐々木は高弟だった。道場のなかを自由に出入りしていたらしい。ふだんから厳しい練習をしていた。
 未堂棟は道場の裏手にはいった。経子の使っていた台所や瑞木の補充していた石水槽があった。台所と石水槽のあいだにある六尺箪笥を見せてもらった。ほんらい、置いてあるはずの佐々木の木刀が消えていた。ほかの木刀には素振り練習によって、血の手形が付着していた。
 佐々木の木刀にも手形がついてあったことが判明する。それは町外れで見つかった、風呂敷内の木刀と同じ痕跡だった。未堂棟は道場でえられた情報に満足する。
 つぎに、被害者の死体が安置されている自身番へと向かった。
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