第4話
文字数 364文字
0時を回る。
ホールの利用者の酸素濃度を測るが、測定できない。それでも静かに寝ている。途切れ途切れであっても呼吸は続いているし、なにより下顎呼吸はまだ見られない。
そういえば三日ほど前、霊感が強いと自分で言っている職員が「線香のにおいがする」と言っていたことを思い出す。この施設にはジンクスがあり、誰かの死が近くなると線香のにおいが香ると言われている。
面白半分にそんなこと言うなよ、怖いから、と、わたしは思う。
今、ホールは、さっき食べたカップそばの匂いしかしない。
仮眠の時間を迎えるまで、まだまだ余裕がある。
見回りついでに、それぞれの居室のカレンダーを、来年のものにかえてこようか。
「行ってきますね、●●さん。少し離れますよ」
ホールで眠る利用者に話しかけてから、そっと見回りに入った。