第五話 今日はホンモノのミルクだよ!
文字数 609文字
翌日も、少女は帰宅すると一目散に縁側へと足を運びました。しかし、この日はいつもと様子が違います。
本を持っていなかったのです。僕が知る限り、初めてのことでした。
代わりに少女が手にしていたものは、小さな容器に入った牛乳と一切れのパンでした。どちらも、自分の給食から調達し、先生やクラスメイトにバレないように持って帰ってきたのです。
「シロちゃん、どこにいるの?」
少女は、お庭の金柑の木の方に呼び掛けます。すると、茂みから嬉々として、仔猫が転がり出てきました。昨日と同じシャム猫です。
「シロちゃん、待っててくれたのね!」
少女は仔猫を抱き抱え、縁側の方へと運びました。仔猫は、もう少女を信用し切っている様子です。嫌がる素振りは、全く見せません。
「ほら、今日はホンモノのミルクだよ! あとね、パンもあるから食べてごらん」
仔猫は、昨日とは違い、大した確認もせずにペロペロとミルクを舐め始めました。余程お腹が空いていたのでしょうか、パンにも一心不乱に噛り付き、僅か数分で完食しました。
それでも、まだ足りていないようです。
「シロちゃん、ごめんね。もうパンはないの」
少女は、急いで台所へと走り去り、クッキーを二枚持ってきました。
「またこれでもいい?」と言いながら、少女はクッキーを細かく砕き、仔猫に与えました。
少女の手のひらに乗せた粉々のクッキーを、仔猫はペロペロと舐めるように食べました。今日も、少女の笑顔が見れました。
本を持っていなかったのです。僕が知る限り、初めてのことでした。
代わりに少女が手にしていたものは、小さな容器に入った牛乳と一切れのパンでした。どちらも、自分の給食から調達し、先生やクラスメイトにバレないように持って帰ってきたのです。
「シロちゃん、どこにいるの?」
少女は、お庭の金柑の木の方に呼び掛けます。すると、茂みから嬉々として、仔猫が転がり出てきました。昨日と同じシャム猫です。
「シロちゃん、待っててくれたのね!」
少女は仔猫を抱き抱え、縁側の方へと運びました。仔猫は、もう少女を信用し切っている様子です。嫌がる素振りは、全く見せません。
「ほら、今日はホンモノのミルクだよ! あとね、パンもあるから食べてごらん」
仔猫は、昨日とは違い、大した確認もせずにペロペロとミルクを舐め始めました。余程お腹が空いていたのでしょうか、パンにも一心不乱に噛り付き、僅か数分で完食しました。
それでも、まだ足りていないようです。
「シロちゃん、ごめんね。もうパンはないの」
少女は、急いで台所へと走り去り、クッキーを二枚持ってきました。
「またこれでもいい?」と言いながら、少女はクッキーを細かく砕き、仔猫に与えました。
少女の手のひらに乗せた粉々のクッキーを、仔猫はペロペロと舐めるように食べました。今日も、少女の笑顔が見れました。