愛について

文字数 1,657文字

自分は他人を愛せない人間である。
よくある話では、愛というのは、相手のいい所も悪い所も全て受け入れてこそ愛になりうる。それを真に受ける自分が、ある時気が付いたーーああ、自分は自分しか愛せない人間だと。
家族はどうなんだろう?無償の愛をくれると言われているが、どうして自分は家族を愛せないだろうか。親に愛されていないなんて、口を裂けても言えない。僕の家は貧乏だった。それでも親が何とかして都会に学校を通わせ、大学卒業まで養ってくれた。感謝する気持ちはなくはない。しかしその親を、振り返りもなく僕は捨てた。
何故自分はそうまでして、家族から逃げたかっただろう?それは精神的潔癖があるからだ。親は自分なりの愛情を注いでくれただろう。不器用でも、それは確かにあった気がする。それでも、日々些細な事で喧嘩はした。感情が高ぶれば手を上げた事も多々ある。家に居ても息が詰まるような思いは沢山あった。寮住まいだった頃は家に居た時より気楽な感じがした。世間では、そういった家庭的な軋轢とうまく折り合いを付けて共に生きていくのが普通だけど、僕には無理だった。思い描いた理想的な親じゃないから、僕は彼らを捨てた。
僕は大所帯の家族に生まれて、その中に人間の屑みたいな奴もあれば、良くない話も嫌という程聞かされた。僕はそのドロドロに絡み合っている輪に入りたくなかった。昔から親戚の誰かを連絡帳に入れたりは絶対にしかった。SNSも例外じゃない。一方的に拒絶してきた。親にだって例外はない。
友達だってそうだ。昔友人が少なからずあった。一番モテた時は中学ぐらいか。その時は好きな子に告白して、見事に自爆した。それでも諦めず性格を変えようと、上辺だけと取り繕って人良さそうなキャラを演じた。それが卒業の後、次第に連絡がなくなって、自然消滅になった。それが高校でも、大学でも同じような感じだった。そんな中でも、親友と思った存在ももちろんあった気がする。中学時代からの付き合いで、高校になってばらばらになっても連絡してくれた僅かの友人がいた。その僅かの友人が、大人になってゆくうちに、多分僕に愛想が尽きたんだろうか、連絡も段々なくなった。当然といえば当然である。僕と会う度、趣味や人生観がずれているから、交わす言葉はどことなく空虚を感じ取った。会話が進まず、延々と昔の事ばっかり繰り返すだけだった。僕も友人に理想を押し付けたんだろう。僕は友人がいてもいなくても割と平然なタイプだから、自らは連絡しない。相手から連絡来なければそれはそれで友達リストから外したらいい。だから今になった思い描いた真の友達はゼロである。
恋については、彼女いない歴=年齢という惨めな人生を送ってきたから、そっちはあまり語れることはなかった。いままで本気に恋いしたのが三回、初恋相手は片思い止まり、その後は告白がことごとく一蹴された。空回りしてきた。不発な恋を経験して気付いたことがある。自分は恋に向いていない、と。昔から思い込みが激しいし、妄想好きだし、恋に落ちる相手なんて大抵一目惚れ、よく知らないまま自爆しただけだった。難しい性格である自覚はある。だから恋について諦めがついた。憧れがあっても、都合のいい事なんて現実に期待はしない。
そもそも僕は他人の悪い所を受け入れない人間である。もちろん人である限り、欠点なんてない方が奇跡である。それはあまり関係のない人間なら、自分と大して関わりのない人間ならわりと許せる。ゆえに僕は他人を愛せない。
昔は人間関係が社会生活において如何に大事なのかを、親父やから口酸っぱく言われた。僕はその親父が嫌いで、その思想も当然否定する。だから僕は死ぬまで独りで生きたい。生きるための必要最低限の人間関係だけを持って、大切な人を作らず、自分独りで生きていこうと決めた。それがどうしても許されないというのなら、その時は死ぬことを考える。僕いつ死んでも構わないように、何もかも捨てきたから、もう思い残りなんてありゃしない。
それまでに、検証していく予定だった。
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