第7話
文字数 955文字
「次、相澤、安部、新庄、山田、中へ」
四人で部屋に入ると、目の前には、設計やら営業やらの部長が顔を並べていた。これから、夢のある図書館コンペの選考結果と選評を聞かなければいけない。
「第三位だ。なかなかよかったよ。独創性がもっと欲しかった。
プレゼンの能力は高かった。もちろん、一人ひとりの今までの行動パターンを見てのことだが、君たちは全員、営業に向いている。安部くんと新庄くんは第二営業部。相澤くんと山田くんは第一営業部に配属されることになった。よろしく頼む」
廊下に出てすぐ、明日香がつぶやいた。
「いいな、相澤くんとしのぶは、エリートの第一営業部で」
「いやいや、担当先が違うだけで、変わらないさ。それより、今晩は打ち上げといこう」
相澤が微笑んだ。
「それ、ええな」
「行く行く」
そして、しのぶもうなずいた。
この前と同じ居酒屋で、今までの反省会と言いつつ、図書館の設計の思い出話に花が咲いたが、安部がビールジョッキをテーブルの上にバンって置いたために静寂が訪れた。
「山田しのぶ! 俺は、お前のことが好きやった。お前は相澤のこと好きなんやな」
安部が大きな声を出すので、他の客まで四人を見た。
「安部くん、こんなところでその話題はダメよ」
明日香が、安部を睨みつけた。
「ごめんなさい」しのぶが頭を下げると「ちょっと、いいかな?」と相澤が、割って入った。
「山田しのぶさん、君のことが好きなんだ。僕と正式に付き合ってくれないか?」
「はぁ?」明日香が睨みつける。「あんたたち、付き合ってたんじゃないの? 付き合ってると思ったから、私は身をひいたのよ」
「相澤くん、ごめんなさい。私は本当は女の子なの」
明日香が、ぷっと吹き出し、大笑いした。安部は状況が掴めず、みんなの顔をオロオロと眺めている。
「しのぶ、この場で、そんなギャグを言うタイプだったの? いくら天然だからって、そりゃ相澤くんに失礼だよ」
明日香はしのぶの背中をバンバン叩いている。
「わかってた。男だと思って気安く触ってたけど、明らかに、肩とか骨格が……それでも、好きなんだ」
相澤が真剣な目でそう言った。
二人の話の内容と真剣な表情が噛み合ってなくて安部と明日香は二人の顔を交互に見ることしか出来なかった。
「ありがとう」しのぶは目に涙をいっぱい溜めていた。
了
四人で部屋に入ると、目の前には、設計やら営業やらの部長が顔を並べていた。これから、夢のある図書館コンペの選考結果と選評を聞かなければいけない。
「第三位だ。なかなかよかったよ。独創性がもっと欲しかった。
プレゼンの能力は高かった。もちろん、一人ひとりの今までの行動パターンを見てのことだが、君たちは全員、営業に向いている。安部くんと新庄くんは第二営業部。相澤くんと山田くんは第一営業部に配属されることになった。よろしく頼む」
廊下に出てすぐ、明日香がつぶやいた。
「いいな、相澤くんとしのぶは、エリートの第一営業部で」
「いやいや、担当先が違うだけで、変わらないさ。それより、今晩は打ち上げといこう」
相澤が微笑んだ。
「それ、ええな」
「行く行く」
そして、しのぶもうなずいた。
この前と同じ居酒屋で、今までの反省会と言いつつ、図書館の設計の思い出話に花が咲いたが、安部がビールジョッキをテーブルの上にバンって置いたために静寂が訪れた。
「山田しのぶ! 俺は、お前のことが好きやった。お前は相澤のこと好きなんやな」
安部が大きな声を出すので、他の客まで四人を見た。
「安部くん、こんなところでその話題はダメよ」
明日香が、安部を睨みつけた。
「ごめんなさい」しのぶが頭を下げると「ちょっと、いいかな?」と相澤が、割って入った。
「山田しのぶさん、君のことが好きなんだ。僕と正式に付き合ってくれないか?」
「はぁ?」明日香が睨みつける。「あんたたち、付き合ってたんじゃないの? 付き合ってると思ったから、私は身をひいたのよ」
「相澤くん、ごめんなさい。私は本当は女の子なの」
明日香が、ぷっと吹き出し、大笑いした。安部は状況が掴めず、みんなの顔をオロオロと眺めている。
「しのぶ、この場で、そんなギャグを言うタイプだったの? いくら天然だからって、そりゃ相澤くんに失礼だよ」
明日香はしのぶの背中をバンバン叩いている。
「わかってた。男だと思って気安く触ってたけど、明らかに、肩とか骨格が……それでも、好きなんだ」
相澤が真剣な目でそう言った。
二人の話の内容と真剣な表情が噛み合ってなくて安部と明日香は二人の顔を交互に見ることしか出来なかった。
「ありがとう」しのぶは目に涙をいっぱい溜めていた。
了