第１話

　そこそこ目立つ、四人組だった。

　大陸に入り込んだ内海である「セトの海」に面する港湾都市であり、「自由市」であるヒナ・リナには、活気と、猥雑さ、いかがわしさや危険が、同居していた。
　街に居る者達は、エルフ族であれ、ドワーフ族であれ人間族であれ、その他の種族であれ、皆、そういった中でこそ生きていける、やっていけるのだといった空気を、纏っていた。

　傭兵、と呼ばれる存在は街に、無数に居た。
　四人も、そういった意味では特に、珍しいとは言えなかったが、見た目に於いては個性的、特徴的ではあった。
　人間族の男女、エルフ族の男、ドワーフ族の男という構成自体も、やや珍しかったが…。

　口入れ屋、と呼ばれる商売もあちこちで、営まれていた。

　大陸に、かつてのユキャドニア帝国、更に以前の、偉大なるエルウォリアの様な…全土に広がる巨大国家は、存在していなかった。
　様々なる性質・大きさの様々なる国々が、割拠する場だった。

　何者かが、一つの国程も有る匙で、東の海から一直線に堀り込んで作ったかの様な「セトの海」は、従って、無数の国々に囲まれる事となっていた。