第17話

文字数 458文字

 それは肉体や、動くものを浮かび上がらせて見せる特殊な闇だった。
 団子人間は、見た目はやはり雪だるまそっくりの着ぐるみのような外観をもっていた。それをオレが思わずまた指摘すると、血走った目を文字どおり二メートルも飛び出させて怒りを示した。目は例の黒丸ではなく人間に近いものなので、オレはそれを見て嘔気をもよおした。今後その異様な憤怒を回避するために、彼と結びついた雪だるまというオレの観念を封印する必要があると認識した。
 オフィーリアはまっすぐな長い黒髪で、衣服を身に着けていず、若き日のエヴァ・グリーンのような見事な肉体美だけをまとっていた。オレがその体に視線をむけても気にすることはなかった。
「団子だって裸よ」

 別室にいる妻を見せるために彼女がオレに渡したのは天体望遠鏡だった。別室がどれだけ遠くにあるというのだろう? オフィーリアの説明によれば、一光年遠くを見ることができる望遠鏡なら、覗いた先は一光年過去の宇宙だということになる。この望遠鏡はつまり妻がいる別室を覗くとともに、妻の過去をも見せてくれるという。
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