12.平安かれひ

文字数 308文字

12.平安かれひ

 芋は馬鈴薯。やうやういでたる芋の芽、みな取り捨て、白く輝ける肌現るるは、をかし。

 葱は玉葱。旬の頃は更なり、刻みたれば涙などいづるも、をかし。

 肉は鶏、生きたるを絞める、そを眺むるは、わろし。
 されど滋味豊かなる味はい、噛む度に拡がるは、をかし。
 
 人参を切りたれば夕日とも見まごう紅。
 芯たる部分の明るく白みたれば、なをのこと。
 
 鍋にて煮込み、香り高き粉を投ずれば、鍋、高貴なる黄に染まり、芳醇なる香り、辺りを漂いたる、そを嗅ぐれば切なる空腹を覚ゆるも、をかし。
 
 食したれば口中に拡がる鮮やかなる辛味心捉へ、数多の憂ひ忘るるその美味、更なる一皿こそあらま欲しけれ。
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