9.ポホヨラの魔女ロウヒ
文字数 1,326文字
「すべてこの世の喜びが たとえ倍でも消えてしまえ、すべての歌も滅びてしまえ! どうしても撃ってやる、やめるものか。」
母親はヨウカハイネンに、ワイナミョイネンを射ればこの世から喜びが消えると忠告した。しかしヨウカハイネンはそれでもいいと言って復讐を決行した。そして矢はワイナミョイネンの肩の肉を刺し、海に叩き落した。不意打ちに、さすがの詩人もなすすべがなかったのさ。
「泣くでないワイナミョイネン、嘆くでないウバントラの人! ここにいるのも結構よ、滞在するのも楽しいさ、皿から鮭を食べなさい、さらにその上豚肉も。」
ワイナミョイネンは、自分の国に帰してくれるなら金なり銀なり与えようかとロウヒに尋ねた。するとロウヒは金も銀もいらない、代わりにサンポを鍛造してほしいと言った。サンポは「白鳥の羽」「妊娠した牛のミルク」「大麦の穂」「羊の柔毛」を材料にして作るマジックアイテムなんだ。
なんせ魔法の品物だからね。そういう不思議さがあってもいいのさ。ロウヒは、もしサンポをくれるなら、娘を差し出そうと言って来た。ワイナミョイネンは自分では無理だから、鍛冶のイルマリネンを紹介することにした。その娘もイルマリネンの妻にしようと提案してね。
ポホヨラの女主人ロウヒは、言葉を述べて、こう告げた。
「その人に娘を差し上げよう、その人に子供を約束しよう、サンポを鍛造し、飾った覆いを飾る方に、白鳥の羽の先から、孕んだ牛のミルクから、一粒の大麦の穂から、一匹の羊の柔毛から。」