11.鉄を罵倒する呪文
文字数 1,458文字
悠長に見えて実はとても大事なことなんだ。ワイナミョイネンは刃物、つまり鉄によって傷を受けた。つまりまず最初に鉄を圧倒しなければならない。しかし鉄を制するには、鉄のなんたるかを知る必要がある。だからワイナミョイネンは老人に「鉄の起源」を伝えるのさ。
ウッコ大気の神は、二つの掌(てのひら)を擦り合わせ、両方を握りしめた 左の膝頭で。そこから乙女が三人生まれ、みんなで自然の女精が三人 鉄の錆(さび)の母となり、青ずんだ口の産婦となった。
鍛冶のイルマリネンが生まれた、生まれそして成長した。彼は炭の山で生まれ、木炭の野で成長した 銅(あかがね)の槌を手にもって、小さな火箸を握って。
鍛冶のイルマリネンは言った。
『何も案ずることはない! 火は知人を焼きはしない、その身内を傷つけない。お前が火の住みかへ出かけても、炎の砦へ、そこでお前は美しく育ち、さらに見事に伸びるだろう。男の立派な剣となり、女の帯の留め金となろう。』
老人は竈(かまど)のそばから唸った、髭男は歌い、頭を振った。
「もういま鉄の起源(おこり)がわかり、鋼の習性(ならい)を知りつくした。
「おお、お前、哀れな鉄よ、哀れな鉄よ、不幸な鉄滓(てっし)よ、呪法のかかった鋼よ! こうしてお前が生み出され、こうして恐るべきものとなり、たいそう大きくなったのか?
そこで老ワイナミョイネンはさらにこんな言葉を述べた。
「決して未来の民族よ、今育ちゆく世代よ、誇らしげに舟の助材を、威張って舟を造るでない! 神により生は定まり、創造主(つくりぬし)により終りが決まる。人の能力によるものでも、強者の力によるものでもない。」