第1話

文字数 592文字

 新潟県警の穂祖川(ほそかわ)警部は千神(ちがみ)島を目指していた。捜査員の手を焼くほどの怪事件の調査の為である。
 千神島からは、九人もの男女の死体が発見されて、一か月が経過した今になっても解決の糸口を見つけられずにいた。
 千神島にはその名の示す通り千の神が宿ると言われる無人島で、五年ほど前にある資産家がそこに別荘を建てて、その彼が死んだあとに別の人間が買い取ったのだという。その人物は偽名を使っていて、正体は掴めずにいた。島には連絡手段はなく、契約している漁師が依頼を受けた時だけ、人や食料などを運ぶ手はずとなっている。

 事件のあらましはこうであった。
 一月ほど前にメールを受け取ったその漁師は、十人の男女を乗せて、島へと運んで行ったらしい。帰りは向こうからの指示がある事になっていたために、そのまま港で待機していたようであった。
 しかし、いくら待っても依然として連絡のつかない漁師が不審に思い、心配になって上陸したところ、屋敷には死体があって、慌てて無線で通報したと調書にあった。
 警察は捜査員たちを大勢引き連れて上陸し、島全体と別荘をくまなく調べたが、何も手掛かりは出てこない。死体は全部で九体なのだから、残りの一人の犯行だと推測されるが、犠牲者の何人かは明らかに自殺であったり、事故と思わる者もふくまれ、事件の全容が掴めずにいた。そこで穂祖川警部が呼ばれた次第であった……。

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