第十二話「少年と電車」

文字数 561文字

学校の帰り道。
電車に乗って帰るのだが、
電車ほど人目が気になるところはない。
密室の狭い空間で人がたくさんいて、
なんだか見られているように思って、
ぎこちなくなってきて、
そんな僕を見て心の中でバカにしているように思うのだ。

だから友達(仮)と一緒に帰ろうと思うのだが、
友達(仮)と帰るのは友達(仮)と帰るので、
気を遣うのだ。

何か喋らないといけないと思うし、
喋るのはいいが、間を空けずに喋ろうと思うと非常に疲れるのだ。
間が空くと気まずくなる。

今日の帰り道もそんな帰り道だった。

どうあがいても嫌な帰り道に、
電車に差し込む夕陽は美しくなんてなく、
とても嫌味ったらしい。

べちゃくちゃべちゃくちゃ、喋らなきゃ生きていけないような、
泳がなきゃ生きていけないマグロみたいだ。

気持ち悪い。

面白いことを話さなきゃいけないような空気も気持ちが悪い。

よく分からないマナーだ。

電車を降りると何故か走り駐輪場まで行く。
自転車に乗ると何故か爆速で家路を急ぐ。
それは僕の趣味だ。

それもあるが、これは僕の数少ない自慢事なのだ。
ただ走るのが速かったり、それだから脚力があって、
自転車も速く漕げる。見てる人たちが全員驚いて、
「はえ~」と言っているような気がして、
気持ちがいい。

それもそれだが、風を切って、髪の毛が全部後ろにいっている、
この時の僕ってかっこよくないか?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み