虎の威を借る狐

文字数 831文字

「こちらの今はなにも入っていないシルクハットから鳥が飛び出てきます。」

そうマジシャンの林田良がマジックショーで観衆にいうと、次の瞬間一羽の鳥がシルクハットから飛び出してきました。その鳥を肩にのせたまま林田は次々に高度なマジックを成功させていきます。

そのショーをみていたライバルマジシャンの広井将生は

"今までのあいつはそんな高度なマジックは出来なかったはずなのになんか変だぞ。"

と思い、ショーが終わってから林田のところに行き、尋ねてみました。

「いままでそんな高度なマジックは出来なかったのにどんな練習したらそんなマジックが出来るようになるんだい?」

広井の言葉を聞いて

「いやぁ。実はね。この肩に止まっている鳥がすごい鳥で、僕のやっているマジック全てこの鳥がやってくれているんだよねぇ。僕は全くマジックのセンスはなかったのに、この鳥がなついてくれて本当にラッキーだったよ。」

と林田に言われた広井は

"なぁんだ。虎の威を借る狐め。おまえがすごい訳じゃないのに、チヤホヤされてむかつく野郎だ。まてよ。その鳥を自分の物にしてしまえば俺も練習しなくても高度なマジックが出来るようになるんじゃねぇか?あいつの隙を見計らってあいつから鳥を奪ってしまおう。"

と思い、林田が肩から鳥を籠に移して、鳥から目を離した隙を見計らって鳥を盗み出すことに成功した。

"やったぜ。これで俺も高度なマジックが出来るようになる。あいつに盗んだのがバレると困るから活動の拠点をここから遠い場所に移そう。"

こうして広井は鳥を持って、遠くの町に移った。その町で高度なマジックを実際にやってみようと鳥を籠から出した瞬間、鳥は大空を舞い、林田のところに一目散に舞い戻っていってしまったではありませんか。

鳥が大空を翔んでいく姿をみて広井は

"林田が虎の威を借る狐であることには間違いねぇ。しかし虎を連れてきて、手懐けることが出来る狐でなければ、威を借ることすら出来ねぇのだからそれも実力なんだよなぁ。"

と思ったそうな。









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