呂布(リョフ)

文字数 985文字

毎月営業成績未達・会社のお荷物部門・穀潰し社員の巣窟

そんな営業部門の建て直しをはかるために、他部門で常に会社の営業成績上位だった田山は部長として配属された。

"俺が部長になったからには毎月の営業成績達成だけでなく会社の売上の柱となるような部門にしてやるぞ"

田山はそう決意して、仕事にとりかかった。

まず行ったのは、前月の営業成績未達者には仕事の進捗状況を逐一メッセージアプリで報告しなくてはいけないという罰則をもうけることだった。

"未達者はスケジュール管理等の基本事項ができていないことが多い。俺はスケジュール管理ができるようになったら、成績が向上した。できるように成るまでは上司に進捗状況を報告しスケジュールに無駄・ムラ・無理がないかチェックしてもらったほうがよい"

そして、今まではラフな服装もOKだったのだが、スーツの完全着用を義務付けた。

"営業は生きるか死ぬかの戦争だ。スーツはいわば戦闘服。ラフな服装では気の緩みが生じて、勝ち取れる成果も勝ち取れなくなってしまう"

就任、一日目からこのようなルールを部署内にもうけ、署員たちを改革を行おうとした。

"俺にできることが他の人間にできないわけがない。"

との思いがまだこのときはあった。



1ヶ月が過ぎた。



このときまでに7人いた部下のうち4人がすでに退職していたのだが、残りの3人が一斉に退職届を出してきた。

「どうして退職するのか、その理由を聞かせてほしい」

田山が尋ねると、3人のうちの1人である桜木が答えた。

「田山部長は営業の取り方が自己流で、周りの人間に教えることができないにもか関わらず結果だけは求めてきてつらいんですよ。それに私たちが営業成績が上がらなくて、困って何時間もサービス残業をしているのに、ご自身は営業成績が上がっているからといって、奥さまや娘さんへの家庭サービスを最優先させて、すぐにご帰宅されているじゃないですか。奥さまや娘さんに向けられる愛情の10分の1でも我々に向けてくれていたら私たちの気持ちも変わったかもしれませんが、そうなることが期待できないので退職を決意したんですよ。」

"自分の仕事に一番の関心を持ち、良い営業成績をあげることに注力しすぎて、部下の気持ちによりそってやることができなかったのか"

田山はそう思ったが、すでに遅かった。

その後、ほどなくして田山も会社を去る決断をしたのは想像に固くない。






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