第7話 我々はみな嘘をついている

文字数 643文字

「ホンネとタテマエ」も、言ってみれば真実と嘘だ。しかし嘘をつくのが嫌だからといってホンネだけで過ごせば、人間関係に破綻をきたすであろうことは明白だろう。
 さらに広げて見ていけば、メディアが日々流すニュースもどれほどの真実が述べられているか疑わしいものであるし、政治家の二枚舌にはもう誰も驚かないだろう。
 
 我々は日々、嘘に囲まれて暮らしている。そんな世の中で正直に生きようとするのは、馬鹿げた事のように感じられても不思議ではない。だから亀田のように、偽りの自分を演じて世間を欺き逆手に取り、世の理不尽を笑ってやりたいと思うのは、極めて自然なことのような気もしてくる。

 朝の通勤電車の中を見渡すと、パリッとスーツを着込んだ人々が、社会人然としながら若干憂鬱そうな顔つきで、今日も出社していく様が伺える。社会の構成員として、みな日々実直に勤労しているように見える。
 だが、実際のところはどうだろう。この中に「会社の繁栄のため、自身の向上のため」まじめに正直に働いている人間は、いったいどれほどいるものだろうか。

 結局のところ、私たちは皆、日々大なり小なり嘘をつきながら生きている。それが人間界というものだし、そうしないと社会は円滑に回っていかないのだから。

 だが、そんな思いから自分がもしも解き放たれたなら。納得いかないことだらけの世の中をまんまと騙して、指を差しながら大声で笑ってやることができたなら。
 ひょっとしたら私もまた、「亀田」のようなさわやかな笑顔になれるのかもしれない。

(了)
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