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文字数 2,786文字
「……ところで、いつから立ち直ってたんですの?」
「結構前から。せっかくシリアスになってるのに、話の腰を折ったら可哀想だと思って」
「一人であの豚の相手させないでくださる? 気持ち悪過ぎて吐きそうでしたわ!」
「それに……ちょっぴり感動してた」
「はい……?」
「……なんでもないわよ!」
二人はエアトライクモードで地表スレスレを、障害物を利用しながら逃走を開始した。
『オイトンのマシンフォートは宇宙一ぃぃぃぃ!!』
———ドゴォ!!
前方の岩場地帯が一瞬で消し飛びクレーターになった。
爆心地から巨大ロボットの腕が上昇し、主の元へ帰っていく。
「ロケットパンチ!?」
「デタラメにもほどがありますわ……」
身を隠す障害物がなくなったため、迂回しようとターンする。
———ドゴォ!
———ズガァン!
「きゃああああ!?」
「いやーん、ですわー!!」
衝撃波に煽られて吹っ飛び、二人はマシンホースから投げ出された。
クレーターに囲まれすっかり逃げ場を失ってしまう。
『ブヒャヒャヒャ! 無駄や無駄や無駄や! オイトンのカートリッジ数は一般マシンホースの53万倍や! 先にエンストするンはそっちやで!』
表現はハッタリだとしても惜しげもなく使ってくるあたり、結果は変わらないだろう。
現に二人のマシンホースのエナジー残量はもう2割を切っている。
たとえオンラインエリアを見つけたとしても、不正を通報しフロンティアガードが到着するまでの間に、八つ裂きにされ証拠も隠滅されるだろう。
「残された手段は、イチかバチか二手に別れる……」
「そして、どちらかが犠牲になってる間に通報する……」
二人とも同じ事が頭をよぎったようだ。
「ペアになった時の約束、覚えてる?」
「どちらかが婚活成功するまで、意地でも解散しない」
「どんなクエストも二人で!」
「決して相棒を見捨てない!」
二人は近付き、肩を寄せ合って、触れた指を絡め合った。
『参加賞はちゃんと用意したるで。おまンらの肉、二人合わせて2年分や。今回の視聴者プレゼント企画は大盛況やろなぁ』
「やっぱり、あんたが捏造したクエストだったのね!」
『ほんまにおめでたい子豚ちゃんやで。何年もフロンティアネットが開通しないエリアは裏工作されとるに決まっトンやろ! ここはオイトンのビジネスエリアや。ここさえ維持出来れば他はどうでもええ。金の力で開拓王も買えるンやからなぁ!』
「体は大きいのに小さい男、ですわ」
『ブヒッ?』
「ほんと、同じ事言ってた昔の誰かさんみたい」
「ここ、ワタクシをディスるところですのっ!?」
「たった21位で支配者気取り、開拓王ごっこは楽ちかったでちゅかぁ?」
豚王のコンソールにデュエル申請シグナルがピコピコ明滅している。
もう一人のピギーが煽っているのだろう。
『ピギィィィィィィィ!!! 7072位ごときの肥豚がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
デュエル申請を承諾する豚王。
『1億2000万度のグリルランチャーや! 二人まとめて焼き豚にしたる!!』
豚王ロボが両手を前に突き出すと、拳が収納されて二対の巨大なプラズマ放射器が飛び出した。
「やばっ、調子に乗って煽り過ぎた……」
「それでは一瞬で蒸発して、ワタクシ達の苦しむ姿は見られませんよ?」
「アタシは肉ないけど、こっちの肉がどうなってもいいのかっ!?」
「あぁん♥ およしになってぇ!」
黒体輻射プラズマ球が膨張を始め、激しいジェット気流が二人を襲う。
飛ばされないよう二人はしっかり抱き合った。
「この際だから白状するけど……あんたと同じお墓に入るの、そんなに嫌じゃないわ」
「生まれ変わっても、また一緒に開拓しましょう」
「約束よ。でもその前に……」
「やっぱり死にたくないですわぁ!」
「助けて!! 神様、仏様、王子様ぁ!!!!」
『待たせたね、マイプリンセス』
甘いイケボイスと共に一筋の閃光が舞い降りた。
豚王ロボの巨体が両断され、静かに左右へ倒れていく。
『アクセルドライブ! キング…キャリバー!!』
横薙ぎの白い閃光がプラズマ放射寸前の両腕を跡形もなく消し飛ばした。
遅れて遥か彼方の空の向こうで大爆発が起きる。
大気の歪みと共に、衝撃音が届くまで数分はかかるだろう。
「な、何や? 何が起きたンや?」
残骸の中からマスタースレイヴユニットを引きずった豚王が這い出した。
彼の前に白い騎士風の人型ロボットが着陸する。
中型サイズのマシンホースだ。
豚王に落とし前をつけさせるため、シャトラとサクナも駆け寄って来た。
ギャラリーが見守る中、騎士から白いタキシード姿の紳士が空中三回転ひねりをして着地する。
「ドン・トンドール。君の悪事の証拠は揃っている。観念したまえ」
愛用の長銃を突き付け、イケメン紳士が豚王に投降を呼びかけた。
「白いタキシードに白いナイトホース……、おまンはまさか……!?」
「そう、その通り!」
まだ言ってない。
「悪の笑いに咽 びく影で、星から星へ美少女の、涙拭って宇宙の始末! 宇宙王子ギャランド、お呼びとあらば即見参!」
キレッキレのポージングと共にイケメン紳士は高らかに名乗りをあげた。
「また変な人ですわ……」
「……ギャランド様♥」
「えっ!?」
ハートになってるシャトラの目を見てドン引くサクナ。
「オイトンはまだ負けてへン……。爆ぜろ、トン引き野郎っ!!」
両手を上げた豚王の体が膨張し破裂した。
「きゃあっ!?」
「大丈夫かい? マイプリンセス」
紳士がどこからか取り出したマントで、美少女二人は爆発から守られた。
「トンズラして体勢を立て直すっ!」
全裸で飛び出した豚王の中身が、ジェットパックを背負ってトンで行く。
「逃げられますわっ!」
「逃がさないさ」
いつの間に仕掛けたのか、紳士が長銃から伸びたワイヤーを巻き取ると豚王は墜落し、うつ伏せで地面に引きずられながら手繰り寄せられた。
「も、もげるっ! オイトンの股間のメルヘンボックスがもげるぅぅぅ!?」
「あら、顔だけは意外とイケメンですわ」
「なんで裸なのよっ!」
赤面して顔を両手で覆っているシャトラを見て、「これは失礼」と紳士は豚王にマントをかぶせてやった。
「糞豚共がぁ! おいっ、親衛隊! はよ助けに来ンかいっ!!」
「すでにフロンティアガードには通報してある。君の部下達は今頃逃げる準備に大忙しだろう」
「オイトンのピギーの忠誠心を甘く見ンなや? このエリアだけでも2000人以上の戦闘員がおるンや。今のうちに逃げるンはおまンらの方やでぇ!」
「結構前から。せっかくシリアスになってるのに、話の腰を折ったら可哀想だと思って」
「一人であの豚の相手させないでくださる? 気持ち悪過ぎて吐きそうでしたわ!」
「それに……ちょっぴり感動してた」
「はい……?」
「……なんでもないわよ!」
二人はエアトライクモードで地表スレスレを、障害物を利用しながら逃走を開始した。
『オイトンのマシンフォートは宇宙一ぃぃぃぃ!!』
———ドゴォ!!
前方の岩場地帯が一瞬で消し飛びクレーターになった。
爆心地から巨大ロボットの腕が上昇し、主の元へ帰っていく。
「ロケットパンチ!?」
「デタラメにもほどがありますわ……」
身を隠す障害物がなくなったため、迂回しようとターンする。
———ドゴォ!
———ズガァン!
「きゃああああ!?」
「いやーん、ですわー!!」
衝撃波に煽られて吹っ飛び、二人はマシンホースから投げ出された。
クレーターに囲まれすっかり逃げ場を失ってしまう。
『ブヒャヒャヒャ! 無駄や無駄や無駄や! オイトンのカートリッジ数は一般マシンホースの53万倍や! 先にエンストするンはそっちやで!』
表現はハッタリだとしても惜しげもなく使ってくるあたり、結果は変わらないだろう。
現に二人のマシンホースのエナジー残量はもう2割を切っている。
たとえオンラインエリアを見つけたとしても、不正を通報しフロンティアガードが到着するまでの間に、八つ裂きにされ証拠も隠滅されるだろう。
「残された手段は、イチかバチか二手に別れる……」
「そして、どちらかが犠牲になってる間に通報する……」
二人とも同じ事が頭をよぎったようだ。
「ペアになった時の約束、覚えてる?」
「どちらかが婚活成功するまで、意地でも解散しない」
「どんなクエストも二人で!」
「決して相棒を見捨てない!」
二人は近付き、肩を寄せ合って、触れた指を絡め合った。
『参加賞はちゃんと用意したるで。おまンらの肉、二人合わせて2年分や。今回の視聴者プレゼント企画は大盛況やろなぁ』
「やっぱり、あんたが捏造したクエストだったのね!」
『ほんまにおめでたい子豚ちゃんやで。何年もフロンティアネットが開通しないエリアは裏工作されとるに決まっトンやろ! ここはオイトンのビジネスエリアや。ここさえ維持出来れば他はどうでもええ。金の力で開拓王も買えるンやからなぁ!』
「体は大きいのに小さい男、ですわ」
『ブヒッ?』
「ほんと、同じ事言ってた昔の誰かさんみたい」
「ここ、ワタクシをディスるところですのっ!?」
「たった21位で支配者気取り、開拓王ごっこは楽ちかったでちゅかぁ?」
豚王のコンソールにデュエル申請シグナルがピコピコ明滅している。
もう一人のピギーが煽っているのだろう。
『ピギィィィィィィィ!!! 7072位ごときの肥豚がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
デュエル申請を承諾する豚王。
『1億2000万度のグリルランチャーや! 二人まとめて焼き豚にしたる!!』
豚王ロボが両手を前に突き出すと、拳が収納されて二対の巨大なプラズマ放射器が飛び出した。
「やばっ、調子に乗って煽り過ぎた……」
「それでは一瞬で蒸発して、ワタクシ達の苦しむ姿は見られませんよ?」
「アタシは肉ないけど、こっちの肉がどうなってもいいのかっ!?」
「あぁん♥ およしになってぇ!」
黒体輻射プラズマ球が膨張を始め、激しいジェット気流が二人を襲う。
飛ばされないよう二人はしっかり抱き合った。
「この際だから白状するけど……あんたと同じお墓に入るの、そんなに嫌じゃないわ」
「生まれ変わっても、また一緒に開拓しましょう」
「約束よ。でもその前に……」
「やっぱり死にたくないですわぁ!」
「助けて!! 神様、仏様、王子様ぁ!!!!」
『待たせたね、マイプリンセス』
甘いイケボイスと共に一筋の閃光が舞い降りた。
豚王ロボの巨体が両断され、静かに左右へ倒れていく。
『アクセルドライブ! キング…キャリバー!!』
横薙ぎの白い閃光がプラズマ放射寸前の両腕を跡形もなく消し飛ばした。
遅れて遥か彼方の空の向こうで大爆発が起きる。
大気の歪みと共に、衝撃音が届くまで数分はかかるだろう。
「な、何や? 何が起きたンや?」
残骸の中からマスタースレイヴユニットを引きずった豚王が這い出した。
彼の前に白い騎士風の人型ロボットが着陸する。
中型サイズのマシンホースだ。
豚王に落とし前をつけさせるため、シャトラとサクナも駆け寄って来た。
ギャラリーが見守る中、騎士から白いタキシード姿の紳士が空中三回転ひねりをして着地する。
「ドン・トンドール。君の悪事の証拠は揃っている。観念したまえ」
愛用の長銃を突き付け、イケメン紳士が豚王に投降を呼びかけた。
「白いタキシードに白いナイトホース……、おまンはまさか……!?」
「そう、その通り!」
まだ言ってない。
「悪の笑いに
キレッキレのポージングと共にイケメン紳士は高らかに名乗りをあげた。
「また変な人ですわ……」
「……ギャランド様♥」
「えっ!?」
ハートになってるシャトラの目を見てドン引くサクナ。
「オイトンはまだ負けてへン……。爆ぜろ、トン引き野郎っ!!」
両手を上げた豚王の体が膨張し破裂した。
「きゃあっ!?」
「大丈夫かい? マイプリンセス」
紳士がどこからか取り出したマントで、美少女二人は爆発から守られた。
「トンズラして体勢を立て直すっ!」
全裸で飛び出した豚王の中身が、ジェットパックを背負ってトンで行く。
「逃げられますわっ!」
「逃がさないさ」
いつの間に仕掛けたのか、紳士が長銃から伸びたワイヤーを巻き取ると豚王は墜落し、うつ伏せで地面に引きずられながら手繰り寄せられた。
「も、もげるっ! オイトンの股間のメルヘンボックスがもげるぅぅぅ!?」
「あら、顔だけは意外とイケメンですわ」
「なんで裸なのよっ!」
赤面して顔を両手で覆っているシャトラを見て、「これは失礼」と紳士は豚王にマントをかぶせてやった。
「糞豚共がぁ! おいっ、親衛隊! はよ助けに来ンかいっ!!」
「すでにフロンティアガードには通報してある。君の部下達は今頃逃げる準備に大忙しだろう」
「オイトンのピギーの忠誠心を甘く見ンなや? このエリアだけでも2000人以上の戦闘員がおるンや。今のうちに逃げるンはおまンらの方やでぇ!」