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文字数 2,369文字
1時間後にはフロンティアガードの艦隊が現れた。
その間に豚王の部下達は誰一人として主を助けに来てはくれなかった。
「肥え太った豚共をみがえじだぐて、せっがぐ貧しぐ惨めな田舎生活さ抜げ出じて、こごまで太っで登り詰めダのに……」
なぜか豚王こと、顔だけはイケメンなメタボ中年の身の上話を聞く流れになっていた。
「なんかこいつ、憎めなくなってきちゃった……」
シャトラも貧しい負け犬生活から這い上がって来た身の上のため、ちょっぴり同情しかかっていた。
サクナという反面教師に出会っていなかったら、自分も同じ道を歩んでいたかもしれない。
「貴方とこの豚は全然違いますわ。愛がありませんもの」
サクナが間に入る。
「ワタクシもかつて、お金で全てが手に入ると信じていた時期がありましたわ。この美貌だって……。でも愛はお金で買えない事に気付いたんですの。むしろ愛がお金を買って逃げて行った……」
「あんたのそれは愛じゃない……」
シャトラのツッコミはスルーされた。
「きっと貴方は本当の愛を見つけられなかった、それだけですわ」
「おまンとオイトンは似とる……。オイトンも今……本当の愛を見つけたかもしれン!」
「気のせいですわ。さようなら」
即答。
豚王はしょぼくれながらフロンティアガードに連行されて行った。
「さすが僕が見初めたプリンセス達だ。ますます惚れ直したよ」
「えっ!?」
———トゥンク♥
「あ、あの……さっきは助けてくれてありがとうございます。アタシもあなたの事を……」
モジモジしながら言いかけて、ハッと相棒の存在を思い出し振り返るシャトラ。
「申し訳ありませんがワタクシ、ずっと追いかけてる殿方が居ますの」
ごめんなさい、と紳士に丁寧に一礼すると、サクナはシャトラに近付いて耳打ちした。
「どちらかの婚活が成功したら、祝福してペアは解散する。そういう約束でしたわね」
「で、でもっ……!」
「おめでとう、シャトラ。ここが貴方のゴールですわ。心配なさらずとも、もう余裕で独り立ちできる腕はありますわ」
「うぅ……サクナ、今までありがとう。手紙書くから結婚式来てね! サクナも結婚したら絶対呼んでね! お互い子供が生まれたら一緒にピクニック行こうね!」
「ふふ、鼻水が出てますわ」
ハンカチでシャトラの顔を綺麗にしてあげると、サクナは無言で背中を向け静かに歩き始めた。
「……ずっと友達だよっ! 略してズットモだよっ! 宇宙のどこに居ても、おばあちゃんになっても、生まれ変わってもズットモだから、絶対忘れないでねっ!!」
去りゆくサクナの背中に叫ぶシャトラ。
サクナは人前で見せられない顔になっていたため、振り返る事は出来なかった。
「彼女も素敵な人だね」
「うん。だって……宇宙一の美少女だから」
「それでは早速……」
紳士はシャトラの肩を引き寄せた。
「そ、そんないきなりっ!?」
顔が近い。だが嫌ではない。
シャトラは真っ赤になって瞳を閉じた。
紳士はシャトラの匂いを嗅いだ後、ゴソゴソと掌大の布を取り出した。
「ふむ、こちらの匂いか……」
様子がおかしいので目を開くと、紳士は純白の布を顔に押し当てているところだった。
その布には見覚えがある。
しかし乙女の思考がその現実を認めようとしない。
だがアレは決してハンカチなどではないし、顔にあてがうためのものでもない。
紳士は続けて透き通ったアレを取り出した。
「この高熱でガラス化した落とし物は、ある正義の戦いの中で拾った物でね。僕はこの持ち主を探していたんだ」
———ずる。
紳士は手慣れた自然な動きでシャトラのスカートに手を入れ、一気にパンツをずり下げた。
「さぁ、このガラスのパンツを穿いてくれるかい?」
「あ、お巡りさん。この人です」
サクナは岩場の影にマシンホースを止め、三角座りして一人大泣きしていた。
「……ひっぐひっぐ。これでいいのですわ。どこのどなたか存じあげませんが、立ち居振る舞いからして相当なボンボンでした。きっとあの方ならド貧乳でチョロいシャトラでも幸せにしてくれますわ……」
「……誰がド貧乳でチョロくて自分さえ良ければいい薄情女だって?」
「そこまで言ってませんわ! ……って、シャトラ!? どうして……」
「はい、コレあんたの分」
シャトラが手渡したそれは、荒野で置き去りにしたサクナの衣類だった。
「あいつの正体は下着泥棒、とんだ変態だったわ……」
「はい……?」
「ちなみにあんたのパンツ、舐めまわされてたから一回洗った方がいいよ」
「エンガチョですわぁぁぁぁぁ!」
慌てて下着を放り投げるサクナ。
「そっかそっか、サクナもそんな風に泣く事があるのかー」
「泣いてなどいませんわっ! ちょっと砂嵐が酷かったので過ぎ去るのを待ってただけですのっ!」
「はいはい♪」
「それより、これに懲りたらチョロい行動は控えるように!」
「サクナは知ってたの?」
「最初から全部お見通しだったから、身を引いたのですわ! でもまぁ、貴方も多少は殿方を見る目が肥えてきたようですわね。……お帰りなさい。シャトラ」
「……ただいま。サクナ」
シャトラの小さな背中に包帯を巻きながら、サクナはこれからどうするのか尋ねた。
「う~ん、今度は涼しいとこで地質調査クエでもする? 危なくないクエストの方がいいかな?」
「貴方と一緒なら、どこへ行っても同じですわ」
「ふふ、違いない」
「ですわ」
お互いに、ちょっぴりスパイスが効いた笑顔は決して見えない。
でもどこか通じ合っている二人の美少女ペアの婚活開拓生活は、まだまだ続きそうである。
その間に豚王の部下達は誰一人として主を助けに来てはくれなかった。
「肥え太った豚共をみがえじだぐて、せっがぐ貧しぐ惨めな田舎生活さ抜げ出じて、こごまで太っで登り詰めダのに……」
なぜか豚王こと、顔だけはイケメンなメタボ中年の身の上話を聞く流れになっていた。
「なんかこいつ、憎めなくなってきちゃった……」
シャトラも貧しい負け犬生活から這い上がって来た身の上のため、ちょっぴり同情しかかっていた。
サクナという反面教師に出会っていなかったら、自分も同じ道を歩んでいたかもしれない。
「貴方とこの豚は全然違いますわ。愛がありませんもの」
サクナが間に入る。
「ワタクシもかつて、お金で全てが手に入ると信じていた時期がありましたわ。この美貌だって……。でも愛はお金で買えない事に気付いたんですの。むしろ愛がお金を買って逃げて行った……」
「あんたのそれは愛じゃない……」
シャトラのツッコミはスルーされた。
「きっと貴方は本当の愛を見つけられなかった、それだけですわ」
「おまンとオイトンは似とる……。オイトンも今……本当の愛を見つけたかもしれン!」
「気のせいですわ。さようなら」
即答。
豚王はしょぼくれながらフロンティアガードに連行されて行った。
「さすが僕が見初めたプリンセス達だ。ますます惚れ直したよ」
「えっ!?」
———トゥンク♥
「あ、あの……さっきは助けてくれてありがとうございます。アタシもあなたの事を……」
モジモジしながら言いかけて、ハッと相棒の存在を思い出し振り返るシャトラ。
「申し訳ありませんがワタクシ、ずっと追いかけてる殿方が居ますの」
ごめんなさい、と紳士に丁寧に一礼すると、サクナはシャトラに近付いて耳打ちした。
「どちらかの婚活が成功したら、祝福してペアは解散する。そういう約束でしたわね」
「で、でもっ……!」
「おめでとう、シャトラ。ここが貴方のゴールですわ。心配なさらずとも、もう余裕で独り立ちできる腕はありますわ」
「うぅ……サクナ、今までありがとう。手紙書くから結婚式来てね! サクナも結婚したら絶対呼んでね! お互い子供が生まれたら一緒にピクニック行こうね!」
「ふふ、鼻水が出てますわ」
ハンカチでシャトラの顔を綺麗にしてあげると、サクナは無言で背中を向け静かに歩き始めた。
「……ずっと友達だよっ! 略してズットモだよっ! 宇宙のどこに居ても、おばあちゃんになっても、生まれ変わってもズットモだから、絶対忘れないでねっ!!」
去りゆくサクナの背中に叫ぶシャトラ。
サクナは人前で見せられない顔になっていたため、振り返る事は出来なかった。
「彼女も素敵な人だね」
「うん。だって……宇宙一の美少女だから」
「それでは早速……」
紳士はシャトラの肩を引き寄せた。
「そ、そんないきなりっ!?」
顔が近い。だが嫌ではない。
シャトラは真っ赤になって瞳を閉じた。
紳士はシャトラの匂いを嗅いだ後、ゴソゴソと掌大の布を取り出した。
「ふむ、こちらの匂いか……」
様子がおかしいので目を開くと、紳士は純白の布を顔に押し当てているところだった。
その布には見覚えがある。
しかし乙女の思考がその現実を認めようとしない。
だがアレは決してハンカチなどではないし、顔にあてがうためのものでもない。
紳士は続けて透き通ったアレを取り出した。
「この高熱でガラス化した落とし物は、ある正義の戦いの中で拾った物でね。僕はこの持ち主を探していたんだ」
———ずる。
紳士は手慣れた自然な動きでシャトラのスカートに手を入れ、一気にパンツをずり下げた。
「さぁ、このガラスのパンツを穿いてくれるかい?」
「あ、お巡りさん。この人です」
サクナは岩場の影にマシンホースを止め、三角座りして一人大泣きしていた。
「……ひっぐひっぐ。これでいいのですわ。どこのどなたか存じあげませんが、立ち居振る舞いからして相当なボンボンでした。きっとあの方ならド貧乳でチョロいシャトラでも幸せにしてくれますわ……」
「……誰がド貧乳でチョロくて自分さえ良ければいい薄情女だって?」
「そこまで言ってませんわ! ……って、シャトラ!? どうして……」
「はい、コレあんたの分」
シャトラが手渡したそれは、荒野で置き去りにしたサクナの衣類だった。
「あいつの正体は下着泥棒、とんだ変態だったわ……」
「はい……?」
「ちなみにあんたのパンツ、舐めまわされてたから一回洗った方がいいよ」
「エンガチョですわぁぁぁぁぁ!」
慌てて下着を放り投げるサクナ。
「そっかそっか、サクナもそんな風に泣く事があるのかー」
「泣いてなどいませんわっ! ちょっと砂嵐が酷かったので過ぎ去るのを待ってただけですのっ!」
「はいはい♪」
「それより、これに懲りたらチョロい行動は控えるように!」
「サクナは知ってたの?」
「最初から全部お見通しだったから、身を引いたのですわ! でもまぁ、貴方も多少は殿方を見る目が肥えてきたようですわね。……お帰りなさい。シャトラ」
「……ただいま。サクナ」
シャトラの小さな背中に包帯を巻きながら、サクナはこれからどうするのか尋ねた。
「う~ん、今度は涼しいとこで地質調査クエでもする? 危なくないクエストの方がいいかな?」
「貴方と一緒なら、どこへ行っても同じですわ」
「ふふ、違いない」
「ですわ」
お互いに、ちょっぴりスパイスが効いた笑顔は決して見えない。
でもどこか通じ合っている二人の美少女ペアの婚活開拓生活は、まだまだ続きそうである。