(二)-11

文字数 338文字

「ここに置かれている資料はどれも古い! 見てみろこの日付を! 二〇世紀の日付だぞ。ここの教師は何もしてこなかったのか! しかも内容がどうしようもなく稚拙だ!」
 そう言って彼は手にしていた資料を私に見せてくれた。
 それは以前ここに存在していたという噂の科学部という部活動での実験内容の報告書であった。文化祭に販売するための石けんの作り方が書かれていた。
 なるほど、彼にして見れば、「この程度」のことなのかもしれない。この街のマッドサイエンティスト、「ホーキンス博士」の息子らしい発言だろう。驚きなのは「稚拙」という、漢字の二字熟語が彼の口から出てきたことだ。彼は国語のテストはいつも赤点だったはずだけれども、どこでそんな単語を覚えたのだろうか。やはり天才肌なのだろうか。

(続く)
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