アボカド

文字数 558文字

水があって

空気があって

暗い所


ちゃんと育てるつもりなら

発根の仕組みくらいは知らないとね

と言ってた割には

クローゼットを しょっちゅう覗いてた

背中を丸めて しゃがみこんでた


気になるのは わかるけど 暗くしとかなきゃ

それじゃ 小二の水栽培だよ と思った


根が伸びて

水を吸い上げ

芽が顔を出す

小さな自然の営みに

首をかしげて 感心してた


その様子に やっぱり小二だな と思った


いっぱしな木に育って 実をつけるかもしれない

高いとこなら ボクがもぐよって 言ったんだっけか

サラダよりパンケーキがいいなって リクエストしたんだっけか

でも 期待できそうにないねって 笑ったんだっけか


陽を知ってる

風も知ってる

なのに 雨は知らないままだった

たまには 屋根のないとこに出さなきゃ だよね

もう キミの胸くらいに育ったっていうのに

過保護だったんかな


小二の気持ちが 葉を立てて

はじめての雨に 濡れてる


アボカドって

小っちゃな 白い花を咲かせるんだってよ

小っちゃなって キミの小指の先くらいなんかな

胸の中で そう思った

咲いたり 咲かなかったり

結構 気まぐれなんだって

気まぐれなのは 見られるの はずかしいからかもね

でも いつか 咲いてくれたらいいね


はずかしい か

後ろを向いて 泣き顔を隠すんと いっしょなんかな

後ろを向いて 笑顔を手繰るんと いっしょなんかな




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