生姜ジャムのお茶
文字数 882文字
午後4時を回ると陽が落ちはじめる
ベランダのシャツ 取り込まなきゃ
葉を落とした街路樹が 時折の北風に震えている
早く取り込まなきゃ
赤いホーローのヤカンは
プピッ ピーッと鳴っていた
カワイイでしょって キミが見つけてきたんだっけ
沸いたよ 沸いたぜ 沸いたってば
カワイらしいけど ちょっと騒々しいなと思った
トイピアノみたいね
鍵盤をでたらめに叩いてるみたいな ね
キミは いちいちハイハーイと返事をして 火から降ろした
ボクには 騒々しいホイッスルにしか聞こえなかったよ
時々 目覚ましのかわりに なったりしてた
そんなにけたたましく吹かなくたって いいんじゃないの
そんな風に思ってた
空焚き防止ね
そうだね と応えた
ほんとはそうじゃないよ
そうじゃないんだけど
わざわざ 違うんじゃないのと言うのも大人気ないし
ヤカンが鳴ってる
あのぉ 沸きましたよ
控えめに教えてくれている
泣くと鳴く 昔は意味の違いなんてなかったんだって
キミは 生姜をすりおろしながら そう言ったんだ
後姿のまま いくつもいくつもすりおろしながら そう言ったんだよ
ソファのボクのとこまで スパイシーな香りが届いた
どうして いま 思い出したんかな
いよいよだね 冬が来るよ
寒いのは 相変わらず苦手だ
キミは どうだったんかな
いつものように過ごそう
そう思ってきて
やっと過ごせるようになったかな
きょう この冬 初めての生姜ジャムをつくったよ
でも ほんとに過ごせてるんかな
熱々のお茶にたっぷり入れて フーフーさましながら 口をつける
蜂蜜 入れすぎちゃった
この甘さも いつか思い出したりするんかな
春までの間 あと何回 このジャムをつくるんかな
最近じゃ 蓋や口から蒸気が漏れちゃってさ
のんきなリコーダーみたいなんだ
あのぉ 沸きましたよ
吹き出す湯気に 差し込む西日が絡む
リコーダーってさ ときどきさみしいよね
少し待って 火を消す
ヤカンを降ろす
取っ手がさ 木でできてるとこ いいよね
なんなんだろうな 胸の中になにかが積もってく
西日かな 湯気かな それともキミなんかな
もう トイピアノのようには鳴らないけど
安心してていいよ
空焚きせずにすんでるからね
ベランダのシャツ 取り込まなきゃ
葉を落とした街路樹が 時折の北風に震えている
早く取り込まなきゃ
赤いホーローのヤカンは
プピッ ピーッと鳴っていた
カワイイでしょって キミが見つけてきたんだっけ
沸いたよ 沸いたぜ 沸いたってば
カワイらしいけど ちょっと騒々しいなと思った
トイピアノみたいね
鍵盤をでたらめに叩いてるみたいな ね
キミは いちいちハイハーイと返事をして 火から降ろした
ボクには 騒々しいホイッスルにしか聞こえなかったよ
時々 目覚ましのかわりに なったりしてた
そんなにけたたましく吹かなくたって いいんじゃないの
そんな風に思ってた
空焚き防止ね
そうだね と応えた
ほんとはそうじゃないよ
そうじゃないんだけど
わざわざ 違うんじゃないのと言うのも大人気ないし
ヤカンが鳴ってる
あのぉ 沸きましたよ
控えめに教えてくれている
泣くと鳴く 昔は意味の違いなんてなかったんだって
キミは 生姜をすりおろしながら そう言ったんだ
後姿のまま いくつもいくつもすりおろしながら そう言ったんだよ
ソファのボクのとこまで スパイシーな香りが届いた
どうして いま 思い出したんかな
いよいよだね 冬が来るよ
寒いのは 相変わらず苦手だ
キミは どうだったんかな
いつものように過ごそう
そう思ってきて
やっと過ごせるようになったかな
きょう この冬 初めての生姜ジャムをつくったよ
でも ほんとに過ごせてるんかな
熱々のお茶にたっぷり入れて フーフーさましながら 口をつける
蜂蜜 入れすぎちゃった
この甘さも いつか思い出したりするんかな
春までの間 あと何回 このジャムをつくるんかな
最近じゃ 蓋や口から蒸気が漏れちゃってさ
のんきなリコーダーみたいなんだ
あのぉ 沸きましたよ
吹き出す湯気に 差し込む西日が絡む
リコーダーってさ ときどきさみしいよね
少し待って 火を消す
ヤカンを降ろす
取っ手がさ 木でできてるとこ いいよね
なんなんだろうな 胸の中になにかが積もってく
西日かな 湯気かな それともキミなんかな
もう トイピアノのようには鳴らないけど
安心してていいよ
空焚きせずにすんでるからね