再会

文字数 793文字

「それにしても、変わってないね」
坂上真理子は、隣にいる長身の男性を見てしみじみと声を出した。去年の年末に忘年会で当たったバッグ、古めかしくないかしらと思いながら。
「真理子ちゃんこそ変わってないよ。……というか良く続いているよね、二人とも」。彼に笑顔を向けられた。やばい。初めて会った時もそう思ったが、10年以上経ってもその顔力は効力を失わない。むしろ凄みを増しているかもしれない。自分が愛嬌があるたぬき顔だと自覚している真理子は、隣に彼がいるこの奇跡を半分喜び、半分呪った。女の子より整っている顔は、卑怯だ。足だって細くてきれい。
 「ところで天ちゃんはさ、何年振りなの?あいつとは」
口元に笑みをつくり、天ちゃんこと天堂聖弥は低い声で答える。「そうだねえ、7年くらいじゃない?」

 
辿り着いた病院は、そこそこ新しく、また大きかった。ノックして入ると、ほっとした顔の0.5秒後に目を見開く恋人の姿が確認できたので、真理子はにやりとした。
「驚いた?」
「うっわ、何で来たの」
ため息をつくのは、ベッドにいる大堀。視線は真理子ではなく、その横にいる天堂に向けられている。
「いや、お前が入院したって聞いたからさ、お見舞いがてら会いたいなあって」
「本当にそれだけ?」にこやかに話す天堂を、訝し気な目で見つめる。それくらい彼の来訪は、大堀にとって意外なものだった。
「もう、本当におーちゃんは天ちゃんに厳しいんだから」。真理子は少しあきれて、でも嬉しそうな顔で続けた。「さすが中高とライバルだっただけあるわ」
「うるせー」何故か顔を赤くする大堀の傍に近づいて、「大堀騎士くん、元気になったら頼みがあるんだ。また連絡するね」とささやく天堂。
「なんだよ改まって気持ち悪い。嫌な予感、するな……」
頭を抱えたいが点滴が邪魔をして抱えられない大堀は、渋面を作って対抗を試みるのだった。

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