ココア

文字数 816文字

 最近、ぼろぼろぼろぼろ泣いている。いつもすぐに泣いてしまうけれど、瞳のうえのほうの、ちょうど涙がたまってゆらゆるするところがずっと弱くなってしまっているみたいで、ゆらゆらせずにすぐにこぼれてしまう。
 すきな歌をちいさな音で聴いて、あつあつのココアにビスケットをひたしながら泣いた。ちょうど、彼のことを思い出してしまった。ココアはすこし濃くつくりすぎたみたいで、飲み終わったら口の端がべとべとした。ビスケットはぐずぐずになってしまったけれど、やわらかくておいしかった。おいしいなあと思いながら、涙はだらだらととまらなくて、お手入れを怠ったほっぺたからゆっくりすべり落ちては、机の上にぽとぽと、水たまりを作っていった。ココアの中にもすこし入ってしまったかもしれない。

 緑色の吹き出しにちいさく収められた文字を見て泣いた。
 あかるさに包まれていたけれど、それでも、彼のため息が聞こえてきそうなことばだった。わたしのことばでは、なにも届いていなかったんだというのがつらくてたまらなかった。

 君のおひさまみたいな笑いかたがすき、理由はないけれど、どうしようもなくすきで、わたしはそれをずっと見ていたいよ。
 君の不器用なほどにまっすぐなところがすき。君のなにに対しても楽しそうなところがすき。君のきらきらした瞳がすき。わたしのおしゃべりに身を乗り出して、たくさん聞いてくれるところがすき。

 いろんな好きを伝えることができるはずなのに、自分では伝えていたはずなのに、それでもわたしではどうにもこうにも届かないようなところで、ひとりでぽろぽろ泣いている彼が見える。どうしようもできないことが目に見えてわかるから、わたしもぽろぽろぽろぽろと泣いてしまう。
 どうしたらいいのかな。君はわたしよりもいろんなことを知っているし、どんなことだって解決してくれるからって頼りすぎていたね。わたしの中で答えを出さなければいけないことも、考えられなくなっている。
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