第22話:EU問題、テロ、中国問題と公害

文字数 1,730文字

 パナソニックとシャープは13年3月期も巨額赤字が続く見通し。いずれも大規模な人員削減などで苦境脱出を図るが、展望は開けていない。一方、地デジ移行特需の反動で収益が悪化した家電量販業界では再編が加速。

 ビックカメラがコジマを、ヤマダ電機がベスト電器を買収するなど弱肉強食時代に突入。欧州債務危機は、ユーロ圏の崩壊といった最悪の事態は回避。しかし、依然としてくすぶり続けた。震源地ギリシャでは、5月の総選挙で緊縮財政反対派が躍進し連立交渉に失敗。

 6月の再選挙で、ユーロ残留を目指す緊縮派が過半数を確保したものの、国際通貨基金「IMF」や欧州連合「EU」との第2次支援の交渉は年末までもつれ込んだ。ただ、欧州中央銀行「ECB」が9月にスペインの国債を無制限に買う方針を表明。

 10月、危機国に最大5千億ユーロの支援融資を実施できる欧州安定機構「ESM」も発足し危機国の国債利回りはやや低下ユーロ相場も反発に転じた。そして2013年となった。1月16日、アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設をイスラム武装勢力が襲撃。

 その時、日本人を含む多数が人質にされた。アルジェリア軍が、17日、施設内に突入。武装ヘリコプターも投入して犯行グループの32人を殺害したが、人質も巻き添えになり、外国人39人が死亡した。日本人の犠牲者はプラント建設大手「日揮」の10人。

 国籍別では、日本人が、最も多かった。事件は北アフリカの国際テロ組織、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ別れたベルモフタール司令官率いる過激派「覆面旅団」が実行した。背景にはアルジェリア政府と過激派の長年の対立。

 また、この地域で誘拐がテロ組織のビジネスになっている問題もある。日本では、東京電力福島第1原発では放射能汚染水の貯蔵タンクで水漏れが相次ぎ、海への流出も判明。汚染水問題が深刻化する中、東京五輪招致で安倍晋三首相は「状況はコントロールされている」と明言。

 政府が対策の前面に立つことになった。原子炉で溶けた核燃料を冷やした水は、汚染水となって増え続けている。貯蔵用の地下貯水槽では4月、遮水シートから汚染水が漏出。継ぎ目をボルトで締めた簡易型タンクからも漏れた。

 そして、原子炉建屋に近い海側の井戸では地下水から高濃度の放射性物質が検出された。8月21日、内戦が続くシリアの首都ダマスカス郊外で、化学兵器を使ったとみられる攻撃があった。それにより毒ガスによる症状で千人以上が死亡した。

 国連は9月16日、化学兵器使用を断定する調査団の報告書を公表。国連の委員会は11月、猛毒サリンを積んだ地対地ロケット弾が「政府の支配地域から反体制派地域に撃ち込まれた明確な証拠がある」と指摘した。

 オバマ米大統領は8月31日、シリアのアサド政権に責任を取らせるため軍事介入を決断したと発表。それを議会に承認を求めたが、反対論が強く断念。9月14日、ロシアとシリア化学兵器の国際管理・廃棄の枠組みで合意。

 その他、中国では、共産党一党独裁への不満が背景とみられる不穏な事件が相次いだ。10月28日、北京の天安門前に車両が突入・炎上し、少数民族ウイグル族とみられる車内の3人を含む5人が死亡。

 11月6日には山西省太原市の省共産党委員会の建物前で連続爆発が起き、1人が死亡し当局は天安門前の事件をウイグル独立派のテロと断定した。しかし、弾圧への個人的恨みによる犯行との見方もある。

 中国では経済成長に伴う格差拡大、役人の腐敗汚職や、民族差別への不満が拡大。11月9~12日の共産党第18期中央委員会第3回総会は治安強化に向けて「国家安全委員会」の新設を決めた。しかし政治改革が遅れれば習近平体制の安定を脅かしかねない。

 中国の大気汚染が深刻化し、白いスモッグの中をマスク姿の市民が歩く光景が、各地で頻繁に見られるようになった。原因は車の排ガスや石炭燃焼から発生する微小粒子状物質「PM2.5」である。

 暖房に石炭を多用する冬場は特に汚染が広がり、中国の大気汚染指数「6段階」で最悪の「深刻な汚染」が連日のように記録された。呼吸器系疾患の患者が急増、航空便の欠航や小中学校の休校など市民生活にも影響を与えた。
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