『ブータン 山の教室』感想

文字数 573文字

 あからさまに教師の職を嫌い辞めたがる、だるそうな主人公ウゲンが際立つ冒頭。ブータンの首都ティンプーの街の様子や暮らしぶりが少し垣間見れる。
 高山の風景は険しく、自然も人もヤクもバランスをとりながら生きている。山々を前に歌うセデュの後ろ姿が、まるで三つの共生を表しているような気がした。
 都会っ子のウゲンの気持ちを汲み取って無理に留めさせようとしない村長の人柄や、身の周りの手助けをしてくれるミチェン、村一番の歌い手で『ヤクに捧げる歌』をウゲンに教えるセデュ。そして映画において主役級の輝きを放つ村の子どもたち、ルナナ村の人々と彼らの生活、次第に適応し、心を寄せたウゲンがみるみる“先生” になっていく。魅力を増していくウゲンに、観ている側としてもずっと村で教え続けてほしいと思うようになる。
 物語はその年の冬になる前までだが、冬の山の風景や村の暮らしも気になるところ。実際にルナナに住む人たちが出演しているということで、フィクションでない部分も多いのだろうと想像しながら楽しめた。

 山の雪が少なくなったと地球温暖化に触れるシーンがあり、山に住む彼らは電気もガスも使わないというのに、そのような場所に温暖化の影響が見られることに複雑な思いがした。

 ブータン映画という珍しさもあるが、是非大きなスクリーンの劇場でも上映してほしい映画。迫力あるはず。
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