第一章・第二話 青年の当惑

文字数 6,226文字

帥宮(そつのみや)様!」
 この日、用があって御所へ赴いた熾仁(たるひと)は、呼ばれて振り向いた。帥宮とは、熾仁の役職、大宰帥(だざいのそつ)から来る呼称だ。
 振り返った先にいたのは、三条(さんじょう)実美(さねとみ)だった。確か、熾仁よりも二つほど下で、今年二十一になるはずだ。
「これは、実美殿」
 足を止めた熾仁は、会釈するような辞儀をする。小走りで追い付いて来た実美も、息を整えながら頭を下げた。
「お久し振りです。お変わりありませんか」
「見ての通りですよ。帥宮様も、お元気そうで」
 型通りの挨拶を終えるなり、実美はチラリと周囲を確認して、声を(ひそ)めた。
「ところで、帥宮様もご意見書、出されたのですか」
 熾仁は、小さく目を(またた)いた。
「……実美殿も?」
「無論です。とは言え、八十八卿(はちじゅうはっきょう)の中には入りませんでしたがね」
 現在、幕府老中の堀田(ほった)正睦(まさよし)が、米国との条約の勅許を求めて上洛している。それを聞いた、公卿(くぎょう)殿上人(てんじょうびと)が、連盟で抗議の座り込みに及び、今や皇宮の前庭は彼らで溢れている。
 その数、ざっくり数えて八十八人となり、のちにこの事件は廷臣八十八卿列参事件(ていしんはちじゅうはっきょうれっさんじけん)と呼ばれるようになるのだが、これはまた別の話だ。
 この五年ほど前には、すでに米国からペリー提督が浦賀へ来航し、その翌年に日米和親条約が締結されている。その時、時間稼ぎで幕府が『条約締結には朝廷の許可が要る』と口走ったばかりに、条約締結には朝廷の許可を得るのが慣例となってしまった。
 その為、今は海外との交渉に関しては、朝廷が主導権を握っているようなもので、総じて幕府の権力が傾いているのは熾仁にも分かる。
「ま、あれだけの数の廷臣が反対しているのです。加えて、主上(おかみ)〔帝〕も海外とやり取りするのはあまり乗り気ではないご様子ですから、すぐに堀田とやらも江戸へ逃げ帰ることになりましょう」
 心配ありませんよ、と実美は熾仁の肩をポンポンと叩き、「では失礼」と頭を下げてその場をあとにした。
 しかし、その楽天的な後ろ姿に、熾仁は彼ほど気楽な気分にはなれなかった。幕府の権威と一緒に、何かが傾き始めている。
 幕府の権威などどうだっていいが、それは熾仁にとって不吉な何かをもたらすのではないか。そんな気持ちが、どうしても拭えなかった。

***

 数日後、堀田正睦が勅許も得られず江戸へ発ったと風の噂に聞く頃、宮中の恒例行事、流鏑馬(やぶさめ)が行われた。
 今日、見物人の波の中で一緒にいるのは、なぜか和宮(かずのみや)の護衛兼侍女をしている邦子だ。
 和宮はどうしたのかと問うと、珍しく具合が悪く伏せっているらしい。だからと言って、邦子と出掛けるのも腑に落ちないものがあるが、彼女がこれも珍しいことに、どうしても熾仁と流鏑馬を見に行きたいと言うので、連れ立ってやって来たのだ。
 彼女は公家の子女らしく、薄布の下がった笠を頭にかぶり、(うちぎ)の裾を腰の辺りまでたくし上げて細い帯で縛る装いをしている。
 薄布越しに見える邦子はすでに十六で、幼い頃よりも美貌に磨きが掛かっている(さま)には、和宮という婚約者がいる身であっても、男としては胸を掻き乱されるものがある。
 第一、婚約者とは言っても、和宮と来たらまだまだ幼く、熾仁にとっては『妹』の域を出なかった。加えて、先帝の皇女のくせに、やることが破天荒なのだ。
 弓を射たがったり、馬に乗りたがったり、果ては武術全般にも手を出したいと言って、この邦子を困らせているようだ。
「熾仁様、あれを」
 邦子が不意に指さすほうへ、熾仁は無意識に視線を向けた。
 ちょうど、次の射手が、出発点に付いたようだ。
 乗っている馬は嫌に小さい。だが、射手が足踏みしている馬の腹を蹴って発進した瞬間、馬も射手も妙に小柄だということは気にならなくなった。
 遠慮のない速度で駆ける馬上で、危なげなく手綱から手を離した射手は、腰に下げた矢筒から流れるような動きで矢を執りつがえ、引き絞って放つ。
 射手が的の前を通り過ぎたあとには、その中心に矢が突き立っていた。見事な腕前だ。
 的は三つ。そのすべての的の中心に矢を突き立てた射手は、喝采を浴びた。熾仁も例に漏れず、惜しみない拍手を送る。
 熾仁が、それ(・・)に気付いたのは、直後のことだった。射手のかぶった笠の後ろから流れる、見慣れた緋色の輝き――黒髪が主流のこの国で、赤みがかったその髪は、そうそう誰もが持っているものでもない。熾仁の周囲では、たった一人だけだ。
(……まさか)
 熾仁は、思わず人混みから抜け出て、射手を捜そうとした。
 その時、その射手のほうも、出番が終わったからか、人混みで誰かを捜していた。
 キョロキョロと周囲を見回してたその小さな射手は、かぶっていた笠を毟り取るようにして脱いだ。緋色の髪が陽光を反射して、一瞬、熾仁の目を射る。
 見慣れた顔が、あっという間に熾仁を捕捉し、パッと輝いた。
「熾仁兄様!」
 花がこぼれるような笑顔に、熾仁は年甲斐もなくドキリとした。今の今まで、和宮はただの『妹』だった。こんな風に、彼女の笑顔に心臓が跳ねるようなことは初めてだ。
「ねぇねぇ、兄様! 今の、見ててくれた?」
 こちらの狼狽など知らぬげに、駆け寄って来た和宮は、キラキラした瞳で熾仁を見上げる。婚約者として出会ってから、七年。そう言えば随分背が伸びたのだな、などと、どうでもいいことが頭をよぎった。
「もう、熾仁兄様ってば聞いてるのっ!?
 沈黙を続ける熾仁に、早くも業を煮やしたのか、和宮は熾仁の来ている直衣(のうし)の袖を引っ張る。
「あ、ああ……聞いてるよ」
「ねぇ、さっきの、見てくれたんでしょ?」
「う、うん……」
「どうだった?」
「ああ……すごかった、よ」
 問われるままに、ぼんやりと答える。
「ホント? ホントに、そう思う!?
「ああ」
「じゃ、今度は本当に遠乗りに連れてってね」
「へ?」
 何か、種類の違うことを言われた気がして、熾仁は覚えず目を(しばたた)いた。すると、和宮は熾仁の腰の辺りに腕を回して抱き付き、頬を膨らせて熾仁を見上げる。
「へ? じゃないわよ。あたしの馬術の腕に不安があったんでしょ?」
「えっ、あっ、いや」
「だから遠乗り、連れてってくれるの、渋ってたんでしょ?」
「いや、渋っていたというか」
「もぉ、はっきりしてよ! こーんなに流鏑馬もできちゃうんだから、狩りにだって一緒に行けると思わない?」
「えっとー」
 心底困って視線を泳がせると、隣にいた邦子が目に入る。視界には、彼女がかぶった笠しか見えなかったが、その笠が小刻みに震えていた。察するに、三度(みたび)珍しいことに、彼女は肩を震わせるようにして笑っている。
「……邦子~……」
 助けを求めるとも、その笑いを咎めるとも付かない声で名を呼ぶと、邦子は「失礼しました」と咳払いをした。そして、和宮へ声を掛ける。
「宮様。流鏑馬のほうの後片付けなどはお済みですか?」
「あ」
 問われた和宮は、パッと熾仁から離れた。
「まだ……」
「お約束しましたよね。出場なさるなら、後片付けまでが出場だと」
「……はぁい」
 邦子の言うことが、正論だと分かっているのだろう。しっぺぐちのように唇を尖らせつつ、彼女に返事をした和宮は、熾仁に向き直った。
「じゃあね、兄様。遠乗り、約束したから」
「へっ!?
 いや、約束なんてしてないだろ! と反駁(はんばく)するより早く、和宮はきびすを返して駆け出す。
 楽しみにしてるからね~、と手を振りながら駆け去ったので、言葉尻は小さくなって行った。それにまた忍び笑いを漏らした邦子が、「では、熾仁様。わたくしもこれにて失礼いたします」と一歩前へ出て一礼した。
「えっ、邦子?」
「わたくしは、和宮様をお手伝いして参ります。熾仁様は先にお戻りくださいませ。お疲れ様でした」
 もう一度、深々と礼をすると、彼女もまた颯爽とその場をあとにした。邦子がいつになくこの流鏑馬見物への誘いに強引だったのは、和宮の出場を見せる為だったらしい。そして同時に、和宮が一緒に橋本邸を出ないのを誤魔化す為に、伏せっていると嘘を言ったのだということにも気付いて、落胆と疲れが入り交じった溜息が漏れる。
 それでも、熾仁の胸には、流れるような動きで的に矢を命中させた和宮の腕前と、その直後の、いつも通りの年相応の言動の落差による衝撃が刻まれていた。

***

 その三月後(みつきご)、「少し出掛けようか」と熾仁に誘われた和宮は、若干納得行かない顔で牛車に揺られていた。
 三月(みつき)前の流鏑馬のあと、『遠乗りに連れて行ってくれる』と約束したので、てっきり遠乗りだと思って喜んだ。なのに、いそいそと乗馬の衣装を着て出た先には、いつも通り牛車が待っていた。
 馬はどこ? 約束が違うじゃない、と抗議したが、やはりいつも通り『乗馬は皇女に相応しい趣味じゃないよ』と宥めるような笑顔で往なされ、『そもそも、君は“遠乗りに行きたい”と言ったけど、私は約束してないよね?』などと屁理屈を捏ねられ、果ては『ちょっと遠出するんだから、牛車に乗っても遠乗り(・・・)だと思ったんだけど、嫌なら無理にとは言わないよ?』と(かわ)されそうになったので、仕方なく牛車に乗り込んだのだ。
 しかも、熾仁だけは馬に乗って牛車を先導している。尚のこと納得が行かず、邦子と二人きりの牛車内は、気まずい沈黙が落ちていた。
 もっとも、気まずいと思っていたのは、和宮だけらしい。邦子は時折、昇降口に垂れた御簾(みす)や、壁に(しつら)えられた小窓から、外を確認している。
 やがて、牛車の速度が落ち始め、完全に停止した。
「宮。着いたよ?」
 外から呼ぶ声に、邦子が御簾を上げる。への字に曲がった唇を直すことはできないまま、牛車の中で中腰に立ち上がり、外で待っていた熾仁の手を取った。
 降り立った場所にあったのは、清水寺(きよみずでら)だ。
「今の時期なら、ちょうど紅葉(こうよう)が見頃だからね」
 熾仁が、柔らかく微笑む。
 行き先や、移動の手段がどうであれ、恋人がお出かけに連れて来てくれたのだ。熾仁の笑顔を見たら、急にそう思えて、和宮の不機嫌顔はふっと溶けた。
 どうせ牛車で出るのなら、意地を張らずにもうちょっと女の子らしくお洒落して来るのだった、と今更ながら後悔が襲う。しかし、着替えに帰るなんて言葉は、もっと口に出し兼ねた。
「うわぁ……」
 清水の檜舞台まで来ると、燃えるような紅葉(もみじ)が、和宮たちを迎えた。
「きれーい……」
 自然、熾仁の手を放れ、和宮は台の手摺りへ駆け寄る。機敏に動きが取れるのは、脚絆(きゃはん)を巻いた袴を履いているからこそだ。やはりこの格好で正解だった、などと、思考が忙しく行き来する。
 不意に吹き上げた風が、紅葉を巻き上げ、和宮の緋色の髪を揺らした。

***

「きゃっ……!」
 突然の強風に、和宮が身を縮める。彼女の周りに、風に煽られた紅葉が、紅い吹雪のように舞い踊った。
 紅い霧の中に、彼女が消えるような錯覚を覚え、熾仁は思わず和宮を後ろから抱き締める。すると、彼女はビクリと小さく身体を震わせた。
「……兄様?」
 訝しげに問う声に我に返る。反射で見下ろすと、こちらを見上げる榛色と視線が噛み合った。
「どうか、した?」
「ああ、いや……端に寄ったら危ないから」
「あ、うん……ありがと」
 和宮は、照れたようにパッと下を向く。自然目が逸れ、俯いたままの熾仁の視界には、彼女の頭頂部が映った。
 それをぼんやりと見ながら、熾仁は昨日、三条実美から聞いた話を思い出していた。

 ――お聞きになりましたか?

 廷臣八十八卿列参事件からこっち、実美とはよく言葉を交わすようになっていた。
 熾仁は、長州藩九代目藩主・毛利(もうり)斉房(なりふさ)の正室・幸子(ゆきこ)女王が大叔母に当たる関係上、あの件を契機にどうも公家の長州系攘夷派として注目されているらしい。
 事情はよく知らないながらも、そう見られているのは実美も同じで、それゆえか仲間意識を持たれているようだった。

 ――あの件を契機に、どうも両陣営から、和宮様のご降嫁が囁かれているらしいですよ。
 ――両陣営?
 ――幕府と朝廷……いえ、正確には有力公家ですかね。何でも、近衛(このえ)忠煕(ただひろ)様が先頃、酒井(さかい)忠義(ただあき)様に、和宮様の降嫁策を提案されたと伺っています。
 ――何ですって!? そんなバカな。
 ――そう仰りたいお気持ちは、お察しします。何しろ帥宮様は、和宮様の許婚(いいなずけ)でおられますから。
 ――一体、何の為に!?
 ――落ち着いてください。恐らく、近衛様の思惑としては、諸外国との条約調印勅許以外にもっと、幕政に口出しできる口実が欲しいのですよ。将軍家へ皇女様を輿入れさせれば、そうできるとお考えなのでしょう。
 ――皇女殿下であればいいのなら、何も和宮でなくても……この六月には、(れっき)とした今上(きんじょう)帝のご皇女である、富貴宮(ふきのみや)様がお生まれです。

 憮然と反駁した熾仁に、実美は首を振った。

 ――そうは言っても、皇宮でお生まれになった皇子様、皇女様方は、なぜか短命です。先帝の御子(みこ)も、ご存じの通り、今上帝と今上帝の異母姉であられる敬宮(ときのみや)様、異母妹の和宮様のみがご存命だ。ほかにも御子はおられたのに、このお三方しかお元気でおられない。富貴宮様とて、いつお隠れになるか、はたまたお元気で育たれるか、今のところ見通しは立ちません。
 ――しかし……!
 ――だから、まだ和宮様に確定したわけではありません。お気を落とされることはない。よしんば、確定したとしても所詮公卿の間のことです。最終的に主上(おかみ)がご承知にならなければ、進む話ではありません。

(……進む話でないと言いながら、なぜ私の耳にわざわざ……)
 それは、いずれ進む可能性が高い話だからではないだろうか。
 どうしようもない不安感が襲い、急遽休暇を取って和宮に会いに来た。そうせずにはいられない衝動を和宮に感じたことなど、今までなかった。彼女と会うのは、ただただ義務でしかなかったのに。
(……放したくない)
 彼女の身体に回した腕に、無意識に力が籠もる。
「……兄様?」
 それに気付いたのか、和宮がもう一度熾仁を呼んで、こちらを見上げた。
「本当にどうかした? 何かあったの?」
 鋭いな、と覚えず苦笑が漏れる。
「兄様?」
「……いや。何でもない。風が冷たくなって来た。そろそろ戻ろうか」
「ええー」
 いつぞやのように彼女の眉根にしわが寄り、花の花弁のような唇が尖る。
「せっかく出掛けて来たのに……まだお昼過ぎじゃない」
「……そうだね」
 クスリとまた一つ、苦笑がこぼれ、熾仁は無意識に口を開いた。
「それとも、このまま駆け落ちでもしようか」
「ええ?」
 色素の薄い、(はしばみ)色の瞳が、今度は真ん丸になる。次いで、彼女は軽く吹き出した。熾仁の腕の中でクルリと回り、器用に身体の向きを熾仁のほうへ向ける。そして、熾仁の腰の辺りに腕を回した。
「やだなぁ、兄様ったら。駆け落ちって意味、分かって言ってる?」
「えっ、あ」
「駆け落ちって言うのは、結婚を許されない二人が手に手を取って逃げることだよ? まあ、確かに情緒的だけど」
 正面から顔を向き合わせた和宮が、小首を傾げる。
「でも、あたしたちは必要ないでしょ。だって、皆に認められた許婚なんだから、逃げなくたってその内結婚するのは決まってるもの」
「……そうだね」
 熾仁は、力ない同意を返した。
 確かに二年前、すでに幕府からも正式に許可が下りている。その証として、幕府からは支度金が有栖川宮家、及び橋本家へ贈られた。
 幕府も認めた結婚が今更、反故になどなるはずがない。
 そうは思うが、熾仁の心にはどうしても、実美から聞いた話がへばりついて離れなかった。

©️神蔵 眞吹2024.
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登場人物紹介

【和宮親子内親王《かずのみや ちかこ ないしんのう》(登場時、7歳)】


生年月日/弘化3年閏5月10日(1846年7月3日)

性別/女

血液型/AB

身長/143センチ 体重/34キロ(将来的に身長/155センチ 体重/45キロ)


この物語の主人公。


丙午生まれの女児は夫を食い殺すと言う言い伝えの為、2歳の時に年替えの儀を行い、弘化2年12月21日(1846年1月19日)生まれとなる。

実年齢5歳の時、有栖川宮熾仁親王と婚約するが、幕閣と朝廷の思惑により、別れることになる。

納得できず、一度は熾仁と駆け落ちしようとするが……。

【徳川 家茂《とくがわ いえもち》(登場時、15歳)】

□幼名:菊千代《きくちよ》→慶福《よしとみ》


生年月日/弘化3年閏5月24日(1846年7月17日)

性別/男

血液型/A

身長/150センチ 体重/40キロ(将来的には、身長/160センチ、体重/48キロ)


この物語のもう一人の主人公で、和宮の夫。


3歳で紀州藩主の座に就き、5歳で元服。

7歳の頃、乳母・浪江《なみえ》が檀家として縁のある善光寺の住職・広海上人の次女・柊和《ひな》(12)と知り合い、親しくなっていく。

12歳の時に、井伊 直弼《いい なおすけ》の大老就任により、十四代将軍に決まり、就任。この年、倫宮《みちのみや》則子《のりこ》女王(8)との縁談が持ち上がっていたが、解消。


13歳の時には柊和(18)も奥入りするが、翌年には和宮との縁談が持ち上がり、幕閣と大奥の上層部に邪魔と断じられた柊和(19)を失う。

その元凶と、一度は和宮に恨みを抱くが……。

【有栖川宮熾仁親王《ありすがわのみや たるひと しんのう》(登場時、18歳)】


生年月日/天保6年2月19日(1835年3月17日)

性別/男


5歳の和宮と、16歳の時に婚約。

和宮の亡き父の猶子となっている為、戸籍上は兄妹でもあるという不思議な関係。

和宮のことは、異性ではなく可愛い妹程度にしか思っていなかったが、公武合体策により和宮と別れる羽目になる。

本人としては、この時初めて彼女への愛を自覚したと思っているが……。

【土御門 邦子《つちみかど くにこ》(登場時、11歳)】


生年月日/天保13(1842)年10月12日

性別/女


和宮の侍女兼護衛。

陰陽師の家系である土御門家に生まれ、戦巫女として教育を受けた。

女だてらに武芸十八般どんと来い。

【天璋院《てんしょういん》/敬子《すみこ》(登場時、25歳)】

□名前の変転:一《かつ》→市《いち》→篤《あつ》→敬子


生年月日/天保6年12月19日(1836年2月5日)

性別/女


先代将軍・家定《いえさだ》の正室で、先代御台所《みだいどころ》。

戸籍上の、家茂の母。


17歳で、従兄である薩摩藩主・島津 斉彬《しまづ なりあきら》(44)の養女となる。この時、本姓と諱《いみな》は源 篤子《みなもとのあつこ》となる。

20歳の時、時の右大臣・近衛 忠煕《このえ ただひろ》の養女となり、名を藤原 敬子《ふじわらの すみこ》と改める。この年の11月、第13代将軍・家定の正室になるが、二年後、夫(享年34)に先立たれ、落飾して、天璋院を名乗っている。

生まれ育った環境による価値観の違いから、初対面時には和宮と対立するが……。

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