第1話 夕凪の世界

文字数 218文字

遠くに、スポーツ量販店の残骸が見える。
暮れかけた晩夏の空に、特徴的な形状の看板が突き刺さっている。青から紫に染まる世界で、耳は茅蜩の声に冒される。
「どこか行くか。どこ行こうかな~。」
眼下に揺蕩う水は赤く染まり、千切れた雲が映る。
フィルターギリギリまで燃えた煙草を、最後に吸い込むと、手から鉄の匂いがした。
思い切り息をして、自分の肩を抱き締めた。
-慣れ親しい、殺意。
僕は自由だ。律儀に灰皿に殻を投げ込むと、僕は鼻唄と共に大きな橋を渡った。
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