第33話「最終話」:子供の誕生と常本さんの死

文字数 1,726文字

 12月28日、早朝、幸恵さんが。男の子を出産したと電話が入り、すぐに、里見夫妻が病院に向かった。到着すると、つぶらな瞳の可愛い男の子が、幸恵さんの横に寝ていた。

 俊子さんが、なんて可愛い子なんでしょうと、大喜びした。その後、連絡が入り、大地に根を生やす様な、しっかりした男の子に育ってほしいと里見大地と命名したと説明された。

 こうして、2019年となった。この年は、今までの累計利益が、5千万円を超えたので、今まで、世話になった。常本恒彦さんに特別ボーナスとして、報奨金1千万円を渡そうと、奥さんと考えていた。

 しかし、2月11日、寝る前に食堂で、熱燗を飲んでいた時、常本恒彦さんと歓談していた時、何か、変な感じがすると奥さんが、里見義彦にうったえた。急に顔つきが、変わったと、そっと告げた。

 そのう、常本恒彦さんが、話していたが、呂律「ろれつ」が回らなくなり、頭を抱えて痛いと訴えたので、急いで救急車を呼んで、外は雪であり20分後に到着し、救急車に乗り札幌の病院に着いた。

 すぐ救急室には入り、30分位して、看護婦さんが、やって来て脳卒中ですと語った。片麻痺が、起きていますが命に別状はなく、助かった。しかし、後遺症が残るので入院して、リハビリを受ける必要があると言われた。

 そこで、患者さんの保険証を持ってきてほしいと言われた。そのまま、常本恒彦さんは、ストレッチャーに載せられて、病室に運ばれた。翌日、恒元さんの部屋に入り、保険証を探して病院にもっていった。

 4日後、病院へ行き、常本恒彦さんの部屋へ入ると、喜んでくれたが、元気がなく、やつれた感じがした。そして、言葉が不自由だったので、メモ用紙に、助けてもらってありがとうと書いた。

 それを見て、里見夫妻が、涙ぐんで、助かってよかったと言うと、笑顔を浮かべた。お見舞いを終わると、担当医に呼ばれて、常本恒彦さんは、高脂血症で、脳血管が、詰まったと話した。

 その血の塊が、心臓に飛べば、心筋梗塞になる可能性もあるので、薬物療法で、しっかり治療しないといけないと先生に言われた。今回は、1週間位で退院できるが、注意が必要だと述べた。

 その後、2月18日に退院して、毎週、病院のリハビリに通うことになった。しかし、言葉は、相変わらず、上手に話せず、筆談中心となった。以前よりも食が細くなり、目に見えて痩せてやつれてきた。

 そして3月4日の朝、7時に里見義彦が、常本恒彦さんの部屋をノックして、起こしに言ったが、反応がないので、心配して部屋に入り、とっさに額に手を当てると冷たくなっていた。

 この時、里見義彦は、常本さんとの出会った時から、牧場を建設するまでの思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。少しして我に返り、病院に電話すると白衣を着た通院していた病院の若い医師が、やってきた。

 そして、眼底を見て、脈拍、呼吸の有無を確認してご臨終ですと告げた。死亡診断書を書いてきますので、それを持って役場に行き、死亡届話出して、葬儀社に連絡して、棺に入れて、葬儀の順をしてくださいと語った。

 その後、ベッドの近くの棚の上にある封筒が、目に入った。それを広げて読んでみると、長い間、本当にお世話になりました。最後は、こんな姿で、お別れするかもしれないと思うと残念でなりません。

 あなたと最初会った時、都会から来た、小生意気な金持ちの坊ちゃんと感じたが、しっかりとした考えをもって、次々と私の意見に忠実に従ってくれて、しっかり稼いでくれた。もちろん、金を持っていたからできたのは間違いない。

 しかし、牧場建設、レストラン、カフェの開設し、従業員の宿舎まで用意して、無料で住まわせてくれ、素晴らしい心根の人だと、驚いた。その姿を神様は、しっかり見ていて、牧場の経営が、軌道に乗った。

 自分ができなかった、牧場を君が、作ってくれて、本当に楽しい晩年だった。それには、心から感謝してるとかいてあり文面を一緒に見ていた奥さんもハンカチを濡らしながら見ていた。

 その時、窓ガラスに亡き常本さんの人なつっこい笑顔が見えた気がして、はっとした。そして、本当にお世話になりましたと常本さんの亡きがらに頭を下げた。【完結】
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